I 担当教員のプロフィール
1961年京都市生まれ。2004年コロラド大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。専門は政治地理学、特に地域社会軍事化、地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。沖縄の基地所在市町村の変容、日米安全保障関係の変化と社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(四段)。
II 科目の主題
この科目は地理学という学問がどのような課題と方法を持つのかについて、19世紀初頭における近代地理学成立以来の発展過程を振り返りながら、考察することを目的とする。とりわけ1950年代以降の英語圏の地理学における諸スクールの研究分野と基本概念について詳細に検討します。なお、本演習は学部生にも開放されています。受講を希望される方は開講前にご連絡ください。
III 達成目標
今年度後期はロバート・サック(Robert D. Sack)による『人間の領域性』(Human Territoriality: Its Theory and History. Cambridge University Press, 1986)の翻訳を進めます。サックによって定式化された「人間の領域性」(領域を用いた人間による空間と行動の戦略的制御)の理論は今日、家屋内のレイアウト、女性専用車両、都市計画、感染対策、領土問題に至る多様な空間的実践の意味を的確に理解する上で不可欠となっています(山﨑2007a参照)。本書は過去山﨑が中心となり部分訳が公刊されていますが(Ⅵ参照)、本演習は受講者との共訳によって残りの翻訳を進め、2021年度の夏をめどに完訳する予定です(現在出版社と交渉中)。受講生は公刊済みの部分訳をベースとする内容理解と機械翻訳の有効な活用により、互いに協力し合いながら和訳を進めていきます。この作業を通してあらゆる地理的スケールで確認される人間による戦略的な空間・行動管理の原理と実態を理解できるようになるでしょう。なお、学部3年生が受講される場合は、この理論を応用する卒業計画を構想されることをお勧めします。
IV 授業内容・授業計画(調整中)
1週間で英文は3ページ前後を読み、その一部を和訳することになります(山崎も状況に応じて加わります)。受講生数等によって進行を調整しますが、決して無理には進めません。もし順調に進むようであれば既に部分的に未公表翻訳されている第6章の翻訳も進めます。
週番号 | 月日 | テーマ | 課題文献(予定) |
---|---|---|---|
0 | 9月29日 | 受講希望者向け事前説明会(録画) | |
1 | 10月6日 | 解題「人間の領域性」 | 山崎(2007a、2007b、2016) |
2 | 10月13日 | 第1章 領域性の意味(1) | 1 The meaning of territoriality |
3 | 10月20日 | 第1章 領域性の意味(2) | 1 The meaning of territoriality |
4 | 10月27日 | 第1章 領域性の意味(3) | 1 The meaning of territoriality |
5 | 11月10日 | 第1章 領域性の意味(4) | 1 The meaning of territoriality |
6 | 11月17日 | 第1章 領域性の意味(5) | 1 The meaning of territoriality |
7 | 11月24日 | 第1章 領域性の意味(6) | 1 The meaning of territoriality |
8 | 12月1日 | 第1章 領域性の意味(7) | 1 The meaning of territoriality |
9 | 12月8日 | 第3章 歴史的モデル(1) | 3 Historical models |
10 | 12月15日 | 第3章 歴史的モデル(2) | 3 Historical models |
11 | 12月22日 | 第3章 歴史的モデル(3) | 3 Historical models |
– | 冬休み中 | 翻訳調整 | |
12 | 1月12日 | 第3章 歴史的モデル(4) | 3 Historical models |
13 | 1月19日 | 第3章 歴史的モデル(5) | 3 Historical models |
14 | 1月26日 | 第3章 歴史的モデル(6) | 3 Historical models |
15 | 2月2日 | 第3章 歴史的モデル(7) | 高崎(未公表) |
V 評価方法
- 出席・参加:毎週の演習では教員・受講生間で翻訳文を確認し、内容について討議します。必ず出席し、積極的に討議に参加してください。出席数が2/3以上の受講生を評価対象とします。
- 翻訳課題:各週で分担する英文の和訳文を、指定するGoogleドキュメントに訳出上の疑問点などについてのコメントを添えて、演習の前々日(日曜日)午後5時までに貼り付けてください。その上で演習当日に課題文全体についての意味内容について確認します。(評価配分60%)
- 輪読課題:翻訳を行わない週は、指定される課題文献を読んだうえで、文献に関する疑問点や論点を演習の前日(月曜日)午後5時までにWebClassに提出して下さい。(評価配分20%)
- 完訳調整:翻訳が終わった章について図版のキャプションと注の翻訳を添えて訳文を完成させます。完訳責任者は演習中に割り振ります。(評価配分20%)
- 評価:評点が全体の60%以上の受講生を合格とします。
VI 教材・課題・参考文献
本演習では、テキストのPDF版を別途提供しますので購入の必要はありませんが、現在は2009年にデジタル復刻されたものが4,300円ほどで入手可能です。手元に置いておきたい方はご購入下さい。また以下の文献は演習中に指定することがありますので、ダウンロードしてご利用ください。
山﨑孝史(2007a)ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』 部分翻訳にあたって.空間・社会・地理思想11,pp. 90-91.
山﨑孝史(2007b)第2章「領域性の理論」 ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』.空間・社会・地理思想11,pp. 92-110.
林修平・山﨑孝史(2007)第4章「カトリック教会」 ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』.空間・社会・地理思想11,pp. 111-140.
田中靖記・山﨑孝史(2007)第5章「アメリカの領域的システム」 ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』.空間・社会・地理思想11,pp.141-174.
山﨑孝史(2016)境界、領域、「領土の罠」―概念の理解のために.地理61-6,pp. 88-96
VII その他
翻訳の疑問点をはじめとする演習の課題について相談したいことがある場合は、遠慮なく山崎までご連絡ください。