教育

大学院(オープン):地理学基礎問題研究演習 2021(後期)

『人間の領域性』を読み解く
Reading and understanding “Human Territoriality”

時間:毎週火曜日、午後1時20分から3時
教室:文学部増築棟 L263(予定)

担当: 山崎孝史(やまざきたかし)
連絡先: yamataka[at]lit.osaka-cu.ac.jp
担当者ホームページ: http://polgeog.jp/

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。2004年コロラド大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。専門は政治地理学、特に地域社会軍事化、地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。沖縄の基地所在市町村の変容、日米安全保障関係の変化と社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(四段)。

II 科目の主題

この科目は地理学という学問がどのような課題と方法を持つのかについて、19世紀初頭における近代地理学成立以来の発展過程を振り返りながら、考察することを目的とします。とりわけ1950年代以降の英語圏の地理学における諸スクールの研究分野と基本概念について詳細に検討します。特に今年度の地理学基礎問題研究は2021年11月に明石書店から刊行予定のロバート・サック著(山崎孝史監訳)『人間の領域性―その理論と歴史(仮題)』の翻訳済み原稿を用い、領域性の理論と用法について考察します。授業形式は原則的に対面型としますが、新型コロナ感染の状況に応じて双方向型の遠隔授業としても実施することがあります。この演習は大学院生はもちろんどなたでも受講できます。

III 達成目標

サック『人間の領域性』は人文地理学および政治地理学のネオ古典として以下のような価値を持っています(山﨑孝史 2007「ロバート・D・サック 『人間の領域性―その理論と歴史』 部分翻訳にあたって」『空間・社会・地理思想』11, pp. 90-91 )。

サックの所論は,画定された空間(領域)を権力 やコントロールの基礎とする社会事象を説明するの に有効であり,領土や行政区画など政治領域の問題 を具体的に考える上で不可欠である。Progress in Human Geography 誌は 2000 年に本書を古典とし て評価する記事を掲載しているが,コメンタリーを 寄せたのは John Agnew と Anssi Paasi という政治 地理学者であった。『人間の領域性』が公刊された 1980 年代は, 英語圏における政治地理学の理論的展開において重 要な時期である。ピーター・テイラーが 1970 年代の ウォーラーステインの世界システム論に立脚した政 治地理学の理論的視角を確立し,ロ バート・ジョンストンらが選挙地理学研究を精緻化 させ,そしてジョン・アグ ニューが構造化理論を政治地理学的な場所論に援用 したのは,全て 1980 年代である。 『人間の領域性』は,これら著作と並んで 1980 年 代以降の英語圏政治地理学の発展に対して非常に重 要な理論的貢献をなした。その意味で『人間の領域 性』は政治地理学を志す者にとっては必読書である。

本演習では、こうした「人間の領域性」の歴史展開と現代的意味を翻訳書の精読を通して理解することを目指します。

IV 授業内容・授業計画(調整中)

関連文献と翻訳済みの各章を精読し、その内容について受講生間で討議する形で進めます。進行・内容については調整・修正することがあります。

週番号 月 日 テーマ 課題文献(予定)
1  10月7日  イントロダクション  
2  10月14日  人間の領域性とは何か  山崎(2007a、2007b、2016)
3  10月21日  人間の領域性に関する諸研究  
4  10月28日  空間分離主義と人文地理学の転回  山崎(2013)
5  11月11日  『人間の領域性』第1章 領域性の意味  
6  11月18日  『人間の領域性』第2章 領域性の理論  
7  11月25日  『人間の領域性』第3章 歴史的諸モデル  
8  12月2日  『人間の領域性』第4章 カトリック教会  
9  12月9日  『人間の領域性』第5章 アメリカの領域的システム  
10  12月16日  『人間の領域性』第6章 職場  
11  12月23日  『人間の領域性』の現代的評価  
12  1月13日  領域性の実例①  
13  1月20日  領域性の実例②  
14  1月27日  領域性の実例③  
15  2月3日  レポート提出(予定)  

V 評価方法

  1.  出席・参加:毎週の演習では課題文献の内容について討議します。必ず出席し、積極的に討議に参加してください。出席数が2/3以上の受講生を評価対象とします。
  2.  リーディング課題:各週の課題の簡単な要約とともに論点と疑問点などについてのコメントを添えて、演習の前日(月曜日)午後5時までにWebClassから提出してください。(評価配分60%)
  3. 実例報告:領域性の理論を用いて、具体的な事例を分析した結果をパワーポイントを用いて発表してください。(評価配分20%)
  4. 実例レポート:実例報告に基づいて4000字以上の学術論文の様式に沿ったレポートを作成してください。提出締め切りは7月27日を予定しています。(評価配分20%)
  5. 評価:評点が全体の60%以上の受講生を合格とします。

VI 教材・課題・参考文献

本演習では、原著も翻訳文も別途提供しますので購入の必要はありませんが、現在は2009年にデジタル復刻されたものが4,300円ほどで入手可能です。手元に置いておきたい方はご購入下さい。サックの領域性の理論については拙著『政治・空間・場所―「政治の地理学」に向けて[改訂版]』(ナカニシヤ出版、2013年)に概説されていますので、ご参照ください。また、以下の文献は演習中に指定することがありますので、ダウンロードしてご利用ください。

山﨑孝史(2007a)ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』 部分翻訳にあたって.空間・社会・地理思想11,pp. 90-91.

山﨑孝史(2007b)第2章「領域性の理論」 ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』.空間・社会・地理思想11,pp. 92-110.

林修平・山﨑孝史(2007)第4章「カトリック教会」 ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』.空間・社会・地理思想11,pp. 111-140.

田中靖記・山﨑孝史(2007)第5章「アメリカの領域的システム」 ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』.空間・社会・地理思想11,pp.141-174.

山﨑孝史(2016)境界、領域、「領土の罠」―概念の理解のために.地理61-6,pp. 88-96

VII その他

翻訳の疑問点をはじめとする演習の課題について相談したいことがある場合は、遠慮なく山崎までご連絡ください。