「地理学概論Ⅰ」第3回討論(1月15日)のテーマは「地政言説の「真偽」」です。景勝地で有名な広島県福山市鞆の浦では、1990年代以降、地区内の港湾道路整備計画をめぐって住民・自治体・市民団体間で激しい論争が起こるようになりました。主たる対立軸は、狭隘な港湾地区の道路整備・埋め立て・架橋を進めて生活環境の改善を重視する立場と江戸時代から残る文化的価値の高い歴史的景観の保護を主張する立場に分かれました (概況) 。この対立は訴訟にまで発展しましたが、2016年の控訴審判決で結審し、終結しました。
今回のディベートでは、ポジションとして、鞆の浦の港湾道路整備を推進しようとした福山市(A)と世界的価値を持つ遺跡の保存を支援する国際NGOイコモス(国際記念物遺跡会議)(B)を選びました。2007年に公表された福山市の整備計画に対して、日本イコモス国内委員会は直接反証する調査結果を公表しており、両者は対照的な地域観を示しています。
受講生は、以下の課題文献を熟読した上で、週レポートの用紙に(どちらかといえば)「支持できるポジションとその理由」(①)そして「支持できないポジションへの反論」(②)を記してください。参考文献として、 下記の森久(2008) が対立の言説的構図を解説しており、福山市による鞆の浦整備をめぐる歴史的経緯については下記の福山市ホームページが参考になります。 ①と②を記した用紙を事前に準備してディベートに臨んでください。
課題文献
ポジションA:福山市 (2007) 「鞆の浦道路港湾整備事業―期待される整備効果」
ポジションB:日本イコモス国内委員会(2007)「歴史的港湾都市「鞆の浦」 文化遺産保全に関わる調査研究報告書(第1次報告)」
参考文献・サイト
森久聡(2008)「地域政治における空間の刷新と存続― 福山市・鞆の浦「鞆港保存問題」に関する空間と政治のモノグラフ」社会学評論59-2
福山市ホームページ「鞆地区道路港湾整備事業を巡る経緯」(2017年6月2日更新)
おしらせ