教育

地理学演習Ⅱ 2023(後期)

自己の関心の構造を知り、研究課題を練り上げる(山崎担当分)

時間と教室:
木曜日3限(13:15-14:45)
文学部増築棟 363室

担当教員:山崎孝史(やまざきたかし)
研究室:文学部棟358号室
電話:06-6605-2407
Eメール:yamataka[at]omu.ac.jp
オフィスアワー:事前連絡があれば随時面談可能です。

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。専門は政治地理学、特に地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。日米安全保障関係の変化と沖縄の社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(4段)。

II 演習概要

本演習は、これまでの専門科目の受講ならびに地理学演習Iを展開させる形で、自己の関心の構造を知り、取り組むべき課題を設定し、具体的な調査地と調査方法をイメージしながら、卒論計画書を作成します。マインドマッピング、地理的写真観察法、さらに仮想フィールドワークを取り入れ、対象フィールドと卒論構想をつなぐ作業を進めます。本演習の集大成は年度末に予定されている第一回の卒論合同演習となります。今年度末の卒論・修論発表会への出席も義務付けられます。

III 演習の構成と評価

(1) 出席と参加
毎週の授業には必ず出席し、討論には積極的に参加して下さい。卒論・修論発表会への出席も義務付けられます。出席数が2/3以上の受講生を評価対象とします。欠席の場合は減点しますが、病欠などの場合は診断書や治療費領収書のコピー等を提示すれば減点しません。

(2) 課題プレゼンテーション
卒論計画書の作成に向けて、授業期間中数回の発表が義務付けられます。いずれも与えられた課題についてレジュメやパワーポイントを作成し、10分程度の発表を行います。(評価配分60点)

(3) 卒論計画書
卒論合同演習で使用する具体性のある卒論計画を作成します。(評価配分40点)

(4) 総得点60点以上を合格としますが、卒論計画書の提出がない場合は合格できません。

IV 演習内容

卒論のテーマの絞り込みは必ずしも容易ではありません。本演習ではお互いの研究関心について語り合い、評価し、励ましあいながら各自のテーマを考えていきます。ある程度テーマが現れたら先行研究などを参考にしながら、具体的なフィールドをイメージし、研究方法について考えます。そのプロセスは以下の6段階に分かれます。

マインドマッピング:各自がマインドマップを作成し、その構図から自分の関心の構成を理解します。漠然とした関心をいくつかの要素の関係から可視化する方法です。

写真観察法:①で見えてきた関心に沿って、各自が単独で野外調査を実施し、写真観察法によって景観の背後にある政治経済・社会文化的過程を探ります。例えば「○○化された」空間を見出す目を養います。

キーワード検索:検索エンジンや学術論文データベースを用いて、複数のキーワードを効果的に組み合わせ、自分の関心に近い学術論文を探し出します。

論文構成法:地理学分野を中心とする学術論文を題目、要旨、章節の構成、引用法などからその構成を理解し、分析方法と論述の組み立てについて理解します。そうした論文をモデルとして引用します。

Why仮説の構築:論文の研究課題として「なぜ○○なのか」という問いを立てることが重要になります。各自の関心あるテーマについて、地理学的なWhyを見つけ、それに対する仮説的な答え(○○だからではないか)を見出しうるフィールドを絞り込みます。

仮想フィールドワーク:ある程度フィールドの候補が絞り込めた段階で、Googleマップなどを用いてストリートビューによる仮想フィールドワークを実施します。航空・地上写真を複数年次で組み合わせ、電子化された地形図と対比するなどして、研究地域の実態を概観します。

これら一連の過程を通して卒論計画書を作成していきます。本演習では受講生を(その多寡にかかわらず)2グループに分け隔週で課題を発表する形で進めます。4年生の前期が就活等に費やされるのを鑑みると、3年生の後期で卒論の方向性を固めておくことに合理性はありましょう。

週番号 月 日 テーマ
1 9月28日 顔合わせ:一年後の自分を想像する
2 10月5日 マインドマッピングで関心を可視化する(1)
3 10月12日 マインドマッピングで関心を可視化する(2)
4 10月19日 地理的写真観察法:街に出て景観の深層を探る(1)
5 10月26日 地理的写真観察法:街に出て景観の深層を探る(2)
(5) 10月27日 卒論合同演習(出席奨励、12月14日の授業に振り替え)
6 11月2日 キーワード検索で研究の現状を知る(1)
7 11月9日 キーワード検索で研究の現状を知る(2)
8 11月16日 学術論文の「構成」を読む(1)
9 11月30日 学術論文の「構成」を読む(2)
10 12月7日 Why仮説を建て、フィールドを考える(1)
11 12月21日 Why仮説を建て、フィールドを考える(2)
冬休み中 ぼちぼち卒論のテーマとフィールドを固め始める
12 1月11日 仮想フィールドワーク:Googleストリートビューを用いて(1)
13 1月18日 仮想フィールドワーク:Googleストリートビューを用いて(2)
14 1月25日 卒論計画書(案)の検討
15 2月1日 第一次「卒論計画書」提出
2月17日 卒論・修論発表会(出席してね)
3月4日 卒論合同演習(第二次「卒論計画書」提出)

 

V 関連サイト

マインドマップについては、トニー・ブザンによるものが有名で、わかりやすく説明したサイトがあります。以下などを参照してください。 https://www.mindmap-school.jp/mindmap/what/

ただしツリー型のマインドマップは連想を前提としていますので、独立したかに見える思考が実は関連性を持つという「発見」に欠ける部分があります。そうした発見的な方法としては「KJ法」が有効です。KJ法については以下を参照してください。KJ法の考案者である川喜田二郎先生は本教室で助教授として勤務されていました。 http://www.ritsumei.ac.jp/~yamai/kj.htm

地理的写真観察法は、日本大学文理学部社会学科の後藤範章先生が提唱された「集合的写真観察法」に示唆を得て、私が地理学用にアレンジしたものです。授業の具体的内容は以下をご覧ください。http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/yamataka/hbs.htm

VI ゼミ合宿

もし、新型コロナの感染が終息に向かうようであれば、学期終了後に提出された「卒論計画書」について集中的に討論し、フィールドで検証するために、ゼミ合宿の実施を考えます。平成28年度は沖縄県沖縄島・与那国島・石垣島、29年度は広島県尾道市・広島市、30年度は兵庫県神戸市・朝来市で実施しました(令和元年度は授業担当なし、令和2年度以降は実施していません)。状況が許すならば、年明けの授業時間の調整についてご相談いたします。