大学院:地理学基礎問題研究 2024(前期・調整中)

『人間の領域性』を読み解く
Reading and understanding Human Territoriality

時間:毎週火曜日、13時15分から14時45分
教室:文学部増築棟2階 263室

担当: 山崎孝史(やまざきたかし)
連絡先: yamataka[at]omu.ac.jp
担当者ホームページ: https://polgeog.jp/

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。2004年コロラド大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。専門は政治地理学、特に地域社会軍事化、地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。沖縄の基地所在市町村の変容、日米安全保障関係の変化と社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(五段)。

II 科目の主題

この科目は地理学という学問がどのような課題と方法を持つのかについて、19世紀初頭における近代地理学成立以来の発展過程を振り返りながら、考察することを目的とします。とりわけ1950年代以降の英語圏の地理学における諸スクールの研究分野と基本概念について詳細に検討します。特に今年度の地理学基礎問題研究は2022年2月に明石書店から刊行されたロバート・デヴィッド・サック著(山崎孝史監訳)『人間の領域性―空間を管理する戦略の理論と歴史』を用い、領域性の理論と用法について考察します。

III 達成目標

サック『人間の領域性』は人文地理学および政治地理学のネオ古典として以下のような価値を持っています(山﨑 2007: 90-91 )。

サックの所論は,画定された空間(領域)を権力やコントロールの基礎とする社会事象を説明するのに有効であり,領土や行政区画など政治領域の問題を具体的に考える上で不可欠である。Progress in Human Geography 誌は 2000 年に本書を古典として評価する記事を掲載しているが,コメンタリーを寄せたのは John Agnew と Anssi Paasi という政治地理学者であった。『人間の領域性』が公刊された1980年代は,英語圏における政治地理学の理論的展開において重要な時期である。ピーター・テイラーが1970年代のウォーラーステインの世界システム論に立脚した政治地理学の理論的視角を確立し,ロバート・ジョンストンらが選挙地理学研究を精緻化させ,そしてジョン・アグ ニューが構造化理論を政治地理学的な場所論に援用したのは,全て1980年代である。 『人間の領域性』は,これら著作と並んで1980年代以降の英語圏政治地理学の発展に対して非常に重要な理論的貢献をなした。その意味で『人間の領域性』は政治地理学を志す者にとっては必読書である。

本演習では、こうした「人間の領域性」の歴史展開と現代的意味を翻訳書の精読を通して理解することを目指します。

IV 授業内容・授業計画

関連文献と翻訳済みの各章を精読し、その内容について受講生間で討議する形で進めます。進行・内容については調整・修正することがあります。

週番号 月 日 テーマ 課題文献
1  4月9日  イントロダクション—授業の構成  
  4月16日  休講  
2 4月23日 『人間の領域性』日本語版への序文、はじめに  山﨑(2007)
3  5月7日 『人間の領域性』第1章 領域性の意味  
4  5月14日 『人間の領域性』第2章 領域性の理論  
5  5月21日 『人間の領域性』第3章 歴史的モデル(1)  
6  5月28日 『人間の領域性』第3章 歴史的モデル(2)  
7  6月4日 『人間の領域性』第4章 カトリック教会(1)  
8  6月11日 『人間の領域性』第4章 カトリック教会(2)  
9  6月18日 『人間の領域性』第5章 アメリカの領域的システム(1)  
10  6月25日 『人間の領域性』第5章 アメリカの領域的システム(2)  
11  7月2日 『人間の領域性』第6章 職場(1)  
12  7月9日 『人間の領域性』第6章 職場(2)  
13  7月16日 『人間の領域性』第7章、解題  山﨑(2016)
14  7月23日  日本における領域性の諸研究  準備中
15  7月30日  論評レポート提出  

V 評価方法

  1.  出席・参加:毎週の演習では課題文献の内容について討議します。必ず出席し、積極的に討議に参加してください。出席数が2/3以上の受講生を評価対象とします。
  2.  リーディング課題:各週の課題の簡単な要約とともに論点と疑問点などについてのコメントを添えて、演習の前日(月曜日)午後5時までに指定されたGoogleドキュメントにポストしてください。(評価配分60%)
  3. 実例レポート:領域性の理論を用いて、具体的な事例を分析した結果を4000字以上の学術論文の様式に沿ったレポートにして下さい。(評価配分40%)
  4. 評価:評点が全体の60%以上の受講生を合格とします。

VI 教材・課題・参考文献

本演習では、翻訳書を使いますので、生協等でご注文下さい。原著の購入は必要はありませんが、現在は2009年にデジタル復刻されたものが4,300円ほどで入手可能です。授業中に原著参照が必要な個所は、こちらで準備しますが、手元に置いておきたい方はご購入下さい。サックの領域性の理論については拙著『政治・空間・場所―「政治の地理学」に向けて[改訂版]』(ナカニシヤ出版、2013年)にも概説されていますので、お持ちの方はご参照ください。また、以下の文献は演習中に指定することがありますので、ダウンロードしてご利用ください。

山﨑孝史(2007)ロバート・D・サック『人間の領域性―その理論と歴史』 部分翻訳にあたって.空間・社会・地理思想11,pp. 90-91.

山﨑孝史(2016)境界、領域、「領土の罠」―概念の理解のために.地理61-6,pp. 88-96

VII その他

翻訳の疑問点をはじめとする演習の課題について相談したいことがある場合は、遠慮なく山崎までご連絡ください。本授業の内容に即した学部生向けの基幹教育科目「現代地理学入門」が同じ火曜日の2限に全学共通教育棟840室で開講されますので、本授業を理解する上で必要と思われる方は、教員にご一報の上、受講して下さい。その場合、期末レポートは免除します。

地理学演習A 2024(前期)

「地域」の成り立ちの深層を解明する
―マイノリティ・コロニアリズム・島嶼の観点から―

教室と時間:
文学部増築棟3階 363室
毎週水曜日、午前10時45分から午後12時15分

担当教員:山崎孝史(やまざきたかし)
研究室:文学部棟358号室
電話:06-6605-2407
Eメール:yamataka[at]omu.ac.jp
オフィスアワー:事前連絡があれば随時面談可能です。

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。専門は政治地理学、特に地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。日米安全保障関係の変化と沖縄の社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(5段)。

II 演習概要

本演習は、「マジョリティとマイノリティ」、「コロニアリズムとポストコロニアリズム」、そして「島嶼のリミナリティ」というテーマについて、受講生各自が国内外における社会的事例と地理学的研究を参照しながら、何らかの特徴から「地域」として分節化される空間や場所の成り立ちと深層構造への理解を深めます。

III 演習の構成と評価

(1) 出席・参加
演習に参加(発表・質問・発言)することによって出席とみなします。出席数が2/3以上の受講生を評価対象とします。欠席や課題の未提出・遅れについては減点しますが、体調と関わる場合は考慮しますので、事前ないし事後にお知らせください。

(2) 予習リーディングについてのコメント投稿
各シリーズの初回にはテーマの解説を行いますが、その際の予習リーディング課題についての感想や疑問点(400字程度)をMoodleを通して投稿してください。(評価配分40点)

(3) 課題プレゼンテーション
平均2週間に1回の発表が義務付けられます。いずれも与えられた課題について受講生の議論をリードする発表を行います。(評価配分60点)

(4) 総得点60点以上を合格とします。

IV 演習内容

 各テーマについてまず関連する新聞記事を検索し、どのような問題が存在するかを理解した上で、具体的な(地理学的)事例と研究の紹介に移ります。全員でテーマについて議論することを通して、理解を深めます。参考文献などは適宜変更・追加します。

週番号 月日 テーマ 参考文献など
1  4月10日  シリーズ1:テーマと課題の解説 マイノリティ・ナショナリズム(『現代地政学事典』106-107)、移民・難民をめぐる包摂・排除(『現代地政学事典』110-111)
   4月17日  休講(課題提出)  
2  4月24日  マジョリティとマイノリティ(社会的事例1)  
3  5月8日  マジョリティとマイノリティ(社会的事例2)  
4  5月15日   マジョリティとマイノリティ(地理学的研究1)  
5  5月22日  マジョリティとマイノリティ(地理学的研究2)  
6  5月29日   シリーズ2:テーマ解説 植民地主義(『現代地政学事典』232-233)、ポストコロニアリズムとは何か(リベラルアーツガイド
7  6月5日   コロニアリズムとポストコロニアリズム(社会的事例1)  
8  6月12日   コロニアリズムとポストコロニアリズム(社会的事例2)  
9  6月19日   コロニアリズムとポストコロニアリズム(地理学的研究1)  
10  6月26日  コロニアリズムとポストコロニアリズム(地理学的研究2)  
11  7月3日  シリーズ3:テーマ解説  海と島嶼(『現代地政学事典』476-477)、第26回人文地理学会政治地理研究部会報告
12  7月10日  島嶼のリミナリティ(社会的事例1)  
13  7月17日   島嶼のリミナリティ(社会的事例2)  
14  7月24日  島嶼のリミナリティ(地理学的研究1)  
15  7月31日  島嶼のリミナリティ(地理学的研究2)  

V 使用テキストなど

現代地政学事典編集委員会編『現代地政学事典』丸善出版、2020年(電子ブック)
山﨑孝史『政治・空間・場所―「政治の地理学」にむけて』ナカニシヤ出版、2013年

学外からの電子ブックへのアクセスはこちらをご覧ください。

このほか参考文献(データベースや単行本・学術論文等)は杉本図書館ウェブサイトおよび同図書館が所蔵するデータベースから利用して下さい。演習に関する諸連絡はMoodleを通して行います。演習日以外にも質問などをポストすることができますので、活用してください。

現代地理学入門 2024(前期)

現代地理学入門―人間の領域性を考える

時間と教室:
火曜日2限(10:45-12:15)全学共通教育棟4階840号室(地図参照) 
対面授業

担当教員:山﨑孝史(やまざき・たかし)
研究室:文学部新棟358号室
オフィスアワー:事前連絡の上、随時
Eメール:yamataka[at]omu.ac.jp([at]は@に)
電話:06-6605-2407(研究室)

ティーチング・アシスタント:村上那由汰(むらかみ・なゆた)

I 担当教員の自己紹介

京都市生まれ。専門は政治地理学、特に地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄、日米安保体制の変化と沖縄の社会運動と投票行動との関わりや、復帰前の沖縄における米軍統治の実態などについて研究中。特技は40年以上続けている合気道(五段、大阪公立大学合氣道部顧問)。

II 授業概要

現代の地理学は、都市と農村、景観、食糧供給、工業立地、流通システム、政治、観光、文化、地図、地理情報、公共政策・環境問題といった多面的な問題を学ぶことのできる分野である。本講義は大きく「地域の見方」、「経済活動の地理的特徴」、「地理的想像力」、「歴史地図の読解」、「地理学と現代社会との接点」の5部から構成され、対象によって分類される地理学の視角と分析方法についてわかりやすく講述する。地理学を通して、過去から未来、そして地域から世界へと、私たちの思考を拡げていく。

III 授業の到達目標

各回の講義と課題の事前・事後学習を通して各週のテーマ、すなわち主要な地理学分野に関わる主題について、地理学的な見地から理解できるようになることを目指す。その理解の到達度については、各週課題の事後確認によって進捗を確認するとともに、小テストによって各段階での到達度を確認する。

IV 授業内容・授業計画

授業回 月 日 テーマ テキストの章 資料(学内限定)
1 4月9日 イントロダクション(講義ガイダンス) はじめに PDF
2 4月16日 地域の見方―領域性の意味と理論(1)オンデマンド 第1章 PDF
3 4月23日 地域の見方―領域性の意味と理論(2) 第1~2章 PDF
4 5月7日 経済活動の歴史地理―領域性のモデル(1) 第3章 PDF
5 5月14日 経済活動の歴史地理―領域性のモデル(2) 第3章 PDF
6 5月21日 第一回小テスト 第1~3章 解答例
7 5月28日 宗教の地理的想像力―カトリック教会(1) 第4章 PDF
8 6月4日 宗教の地理的想像力―カトリック教会(2) 第4章 PDF
9 6月11日 米国の歴史地図―領域的システム(1) 第5章 PDF
10 6月18日 米国の歴史地図―領域的システム(2) 第5章 PDF
11 6月25日 第二回小テスト 第4~5章 解答例
12 7月2日 現代社会との接点―職場の領域性(1) 第6章 PDF
13 7月9日 現代社会との接点―職場の領域性(2) 第6章 PDF
14 7月16日 現代社会との接点―職場の領域性(3) 第6章 PDF
15 7月23日 総括―領域性の事例 第7章、解題 PDF
16 7月30日 期末テスト 第6章~解題 解答例

V 成績評価方法

原則としてテスト日を含む授業回数の2/3以上の出席者を成績評価の対象とします(Moodleに記録されたデータを用います)。到達目標の達成度については、第一回・第二回小テストについては教科書で説明される理論の理解の程度、期末テストについては理論の応用力が試されます。三回のテストの合計点100点満点に対して60点以上得点して、人間の領域性の理論を理解し、それを現代社会に応用して考えることができると判断された場合に合格とします。

VI 履修上の注意

講義ホームページ(https://polgeog.jp/)と学習管理システム(Moodle)を用いて講義を進めますので、講義スライド等の必要な情報を各媒体から入手し、講義に臨んでください。

VII 教科書

ロバート・サック(山﨑孝史監訳)『人間の領域性―空間を管理する戦略の理論と歴史』明石書店、2022年(授業は本書に忠実に沿って進め、試験の際も持ち込めますが、購入は任意とします)

地理学講読演習A 2024(前期)

英語を通して人文地理学を概観する―ジェンダー・障がい・環境の観点から

教室と時間
対面授業 文学部増築棟363室
毎週月曜日、午前10時45分から午後12時15分

担当教員:山崎孝史(やまざきたかし)
研究室:文学部増築棟358号室
電話:06-6605-2407 Eメール:yamataka[at]omu.ac.jp
オフィスアワー:事前連絡があれば随時面談可能です。

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。専門は政治地理学、特に地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。日米安全保障関係の変化と沖縄の社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(5段)。米国西部にあるコロラド大学ボールダー校地理学部大学院に1998年から2001年まで3年間留学。

II 演習概要

本年度前期の講読演習は、Stentor Danielson (Slippery Rock University) が作成したオンライン人文地理学事典 Overview of Human Geography (以下OHG)を用いて、「ジェンダーとセクシュアリティ」、「障がい」、「環境正義」に係る項目を精読していきます。

III 演習の構成と評価

(1) 出席:指定された期日までに各週の課題を提出すること、ならびに討論に当日参加することによって出席とみなします。出席(課題提出)数が2/3以上の受講生を評価対象とします。未提出や提出が遅れた場合は減点しますが、体調と関わる場合は考慮しますので、事前ないし事後にお知らせください。

(2) 各週の課題:オンライン翻訳サイトを用いて、OHGから選ばれた課題項目について、全員で翻訳を進めます。課題項目の翻訳文と疑問点を演習実施日の前々日(各週土曜日)の午後5時までに指定のサイト(Googleドキュメント)にアップロードして下さい。また演習実施日の前日に翻訳担当以外の箇所についてもコメントを付して下さい(70点)。

(3) 討論用コメント:三つのテーマと関わる全体討論を実施します。各テーマの完訳を参照し、各自の意見をGoogleフォームなどを使って収集し、討論の素材とします(30点)。

(4) 以上の課題の内容を評価し、総得点60点以上を合格とします。

IV 演習内容

演習の日程や課題内容は状況に応じて変わることがありますので、ご了解ください。

週番号 月 日 テーマ 課題節
1  4月8日  イントロダクション  
2  4月15日  Gender and Sexuality (休講課題)  What is Gender?
3  4月22日  Gender and Sexuality(スウ先生講演会)  The Geography of Gender 
4  5月13日  Gender and Sexuality  Gendered Spaces 
5  5月20日  Gender and Sexuality  Sexuality and Sexualized Spaces
6  5月27日  テーマ討論  
7  6月3日  Disability   Identity
8  6月10日  Disability   Identity
9  6月17日  Disability   The Social Model of Disability
10  6月24日  Disability   The Geography of Disability
11  7月1日  テーマ討論  
12  7月8日  Environmental Justice  The Unavoidability of the Justice Question
13  7月15日  Environmental Justice  Substantive vs Procedural Justice, Principles of Justice
14  7月22日  Environmental Justice  Principles of Justice
15  7月29日  Environmental Justice  Considerability
16  8月5日  テーマ討論  

V テキト・課題文献 

Stentor Danielson (Slippery Rock University) 著 Overview of Human Geographyのサイトは以下です。
http://debitage.net/humangeography/index.html

VI 辞書サイトとコミュニケーション

翻訳に際してはテキストを一括して機械翻訳するDeepLGoogle翻訳がありますので、これらを併用して翻訳を進めて下さい。活用の仕方はGoogleドキュメントを通してお知らせします。

演習に関する諸連絡はGoogleドキュメントやMoodleを通して行います。演習日以外にも質問などをポストすることができますので、活用してください。翻訳などで困ったことがあれば遠慮なく教員に相談して下さい。

地理学演習Ⅱ 2023(後期)

自己の関心の構造を知り、研究課題を練り上げる(山崎担当分)

時間と教室:
木曜日3限(13:15-14:45)
文学部増築棟 363室

担当教員:山崎孝史(やまざきたかし)
研究室:文学部棟358号室
電話:06-6605-2407
Eメール:yamataka[at]omu.ac.jp
オフィスアワー:事前連絡があれば随時面談可能です。

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。専門は政治地理学、特に地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。日米安全保障関係の変化と沖縄の社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(4段)。

II 演習概要

本演習は、これまでの専門科目の受講ならびに地理学演習Iを展開させる形で、自己の関心の構造を知り、取り組むべき課題を設定し、具体的な調査地と調査方法をイメージしながら、卒論計画書を作成します。マインドマッピング、地理的写真観察法、さらに仮想フィールドワークを取り入れ、対象フィールドと卒論構想をつなぐ作業を進めます。本演習の集大成は年度末に予定されている第一回の卒論合同演習となります。今年度末の卒論・修論発表会への出席も義務付けられます。

III 演習の構成と評価

(1) 出席と参加
毎週の授業には必ず出席し、討論には積極的に参加して下さい。卒論・修論発表会への出席も義務付けられます。出席数が2/3以上の受講生を評価対象とします。欠席の場合は減点しますが、病欠などの場合は診断書や治療費領収書のコピー等を提示すれば減点しません。

(2) 課題プレゼンテーション
卒論計画書の作成に向けて、授業期間中数回の発表が義務付けられます。いずれも与えられた課題についてレジュメやパワーポイントを作成し、10分程度の発表を行います。(評価配分60点)

(3) 卒論計画書
卒論合同演習で使用する具体性のある卒論計画を作成します。(評価配分40点)

(4) 総得点60点以上を合格としますが、卒論計画書の提出がない場合は合格できません。

IV 演習内容

卒論のテーマの絞り込みは必ずしも容易ではありません。本演習ではお互いの研究関心について語り合い、評価し、励ましあいながら各自のテーマを考えていきます。ある程度テーマが現れたら先行研究などを参考にしながら、具体的なフィールドをイメージし、研究方法について考えます。そのプロセスは以下の6段階に分かれます。

マインドマッピング:各自がマインドマップを作成し、その構図から自分の関心の構成を理解します。漠然とした関心をいくつかの要素の関係から可視化する方法です。

写真観察法:①で見えてきた関心に沿って、各自が単独で野外調査を実施し、写真観察法によって景観の背後にある政治経済・社会文化的過程を探ります。例えば「○○化された」空間を見出す目を養います。

キーワード検索:検索エンジンや学術論文データベースを用いて、複数のキーワードを効果的に組み合わせ、自分の関心に近い学術論文を探し出します。

論文構成法:地理学分野を中心とする学術論文を題目、要旨、章節の構成、引用法などからその構成を理解し、分析方法と論述の組み立てについて理解します。そうした論文をモデルとして引用します。

Why仮説の構築:論文の研究課題として「なぜ○○なのか」という問いを立てることが重要になります。各自の関心あるテーマについて、地理学的なWhyを見つけ、それに対する仮説的な答え(○○だからではないか)を見出しうるフィールドを絞り込みます。

仮想フィールドワーク:ある程度フィールドの候補が絞り込めた段階で、Googleマップなどを用いてストリートビューによる仮想フィールドワークを実施します。航空・地上写真を複数年次で組み合わせ、電子化された地形図と対比するなどして、研究地域の実態を概観します。

これら一連の過程を通して卒論計画書を作成していきます。本演習では受講生を(その多寡にかかわらず)2グループに分け隔週で課題を発表する形で進めます。4年生の前期が就活等に費やされるのを鑑みると、3年生の後期で卒論の方向性を固めておくことに合理性はありましょう。

週番号 月 日 テーマ
1 9月28日 顔合わせ:一年後の自分を想像する
2 10月5日 マインドマッピングで関心を可視化する(1)
3 10月12日 マインドマッピングで関心を可視化する(2)
4 10月19日 地理的写真観察法:街に出て景観の深層を探る(1)
5 10月26日 地理的写真観察法:街に出て景観の深層を探る(2)
(5) 10月27日 卒論合同演習(出席奨励、12月14日の授業に振り替え)
6 11月2日 キーワード検索で研究の現状を知る(1)
7 11月9日 キーワード検索で研究の現状を知る(2)
8 11月16日 学術論文の「構成」を読む(1)
9 11月30日 学術論文の「構成」を読む(2)
10 12月7日 Why仮説を建て、フィールドを考える(1)
11 12月21日 Why仮説を建て、フィールドを考える(2)
冬休み中 ぼちぼち卒論のテーマとフィールドを固め始める
12 1月11日 仮想フィールドワーク:Googleストリートビューを用いて(1)
13 1月18日 仮想フィールドワーク:Googleストリートビューを用いて(2)
14 1月25日 卒論計画書(案)の検討
15 2月1日 第一次「卒論計画書」提出
2月17日 卒論・修論発表会(出席してね)
3月4日 卒論合同演習(第二次「卒論計画書」提出)

 

V 関連サイト

マインドマップについては、トニー・ブザンによるものが有名で、わかりやすく説明したサイトがあります。以下などを参照してください。 https://www.mindmap-school.jp/mindmap/what/

ただしツリー型のマインドマップは連想を前提としていますので、独立したかに見える思考が実は関連性を持つという「発見」に欠ける部分があります。そうした発見的な方法としては「KJ法」が有効です。KJ法については以下を参照してください。KJ法の考案者である川喜田二郎先生は本教室で助教授として勤務されていました。 http://www.ritsumei.ac.jp/~yamai/kj.htm

地理的写真観察法は、日本大学文理学部社会学科の後藤範章先生が提唱された「集合的写真観察法」に示唆を得て、私が地理学用にアレンジしたものです。授業の具体的内容は以下をご覧ください。http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/yamataka/hbs.htm

VI ゼミ合宿

もし、新型コロナの感染が終息に向かうようであれば、学期終了後に提出された「卒論計画書」について集中的に討論し、フィールドで検証するために、ゼミ合宿の実施を考えます。平成28年度は沖縄県沖縄島・与那国島・石垣島、29年度は広島県尾道市・広島市、30年度は兵庫県神戸市・朝来市で実施しました(令和元年度は授業担当なし、令和2年度以降は実施していません)。状況が許すならば、年明けの授業時間の調整についてご相談いたします。

 

地理学概論A 2023(後期)

「政治」を地理学する―政治地理学の方法論
General Geography A
Doing Political Geographies: Methodologies in Political Geography

教室と時間
対面授業 1号館137室
毎週火曜日、午前10時45分から12時15分

担当:山崎孝史(やまざきたかし)
連絡先: yamataka[at]omu.ac.jp
担当者ホームページ: https://polgeog.jp/
講義ホームページ: https://polgeog.jp/archives/3693

I 担当教員のプロフィール

1961年京都市生まれ。2004年コロラド大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。専門は政治地理学、特に地域社会軍事化、地政学、社会運動、アイデンティティ・ポリティクス。調査フィールドは沖縄。沖縄の基地所在市町村の変容、日米安全保障関係の変化と社会運動や投票行動との関わりを研究中。特技は合気道(四段)。

II 授業概要

心理学・社会学・教育学と比べて地理学の成立は古く、人類を取り巻く環境と密接に関わる地理的知識の体系化はギリシャ・ローマ時代にさかのぼる。本授業は人間―環境関係と地理的知識の体系化がどのようになされてきたのかについて概説したうえで、それらを考察するためのいくつかのトピックを具体的に例示する。それによって、グローバル化の時代において多様な地理的スケールで発生する飢饉、貧困、抑圧、差別、紛争、環境破壊を考える上で、地理学的知識がどのような意味を持ちうるのかを考察する。特に本年度は地理学から「政治」をとらえる方法論的視角に焦点を据えていきたい。

III 到達目標

単に過去から現在に至る局地的な事象を考察することを超えて、人類史的な視点から世界や地球環境をとらえることを目標とする。そうした視点をベースに、グローバル化の時代において多様な地理的スケールで発生する飢饉、貧困、抑圧、差別、紛争、環境破壊を考える力を養う。そして、地理学史の展開を踏まえて、地球大での環境と平和に資する地理学的視点を身につける。

IV 授業内容・授業計画

提供される資料の内容は当日の授業内容と若干異なることがありますので、ご留意ください。

週番号 月日 テーマ(テキストの章) 資料(学内限定)
第1週 9月26日 「政治」を地理学する(序章) PDF
第Ⅰ部 地理学で「政治」を捉える
第2週 10月3日 民主主義(1章) PDF
第3週 10月10日 支配と対立(2章) PDF
第4週 10月17日 地方自治(3章) PDF
第5週 10月24日 外交・安全保障(4章) PDF
第6週 10月31日 環境をめぐる政治(5章) PDF
第Ⅱ部 「政治」の地理的諸相を描く
第7週 11月7日 コミュニティ(6章) PDF
第8週 11月14日 宗教(7章) PDF
第9週 11月28日 ジェンダー(8章) PDF
第10週 12月5日 観光(9章) PDF
第11週 12月12日 農産物(10章、オンデマンド) PDF
第Ⅲ部 「政治」空間の形成と変容を追う
第12週 12月19日 大阪と佐世保(11章) PDF
第13週 1月9日 ウトロ(12章) PDF
第14週 1月16日 沖縄島(13章) PDF
第15週 1月23日 対馬(14章) PDF
期末テスト
第16週 1月30日 期末テスト  

Ⅴ 事前事後学習の内容

事前学習として、毎週講義前に教科書の指定章を読み、Moodleで示される各週の課題を考察し、その回答(あるいは討論時に発言したい内容)を当該講義前に提出してください(週レポート課題)。 授業中に受講生から示された意見や質問に答えますので、事後学習としてその内容を期末テストの準備に活用して下さい。

Ⅵ 評価方法

(1) 出席
Moodleチェッカーで16週のうち11回以上の出席が確認される受講生を評価対象とします。欠席の場合はその他の評価得点から減点する措置をとりますが、体調などの理由による欠席や遅延はその証明となる書類(医療費領収書や診断書のコピー)の提出があれば欠席とはみなしません。

(2) 週リーディングレポート(評価配分60%)
予習として毎週講義前に教科書の指定章あるいは課題文献を読み、Moodle示される各週の課題を考察し、その回答(疑問点)を当該講義前日(月曜日午後5時まで)にMoodleを通して提出してください。提出されたレポートには評点を(場合によってはコメントも加えて)お知らせする予定です。

(3) 期末テスト(評価配分40%)
学期末に記述式のテストを実施する予定です。実施形態は授業中に説明します。体調不良などの理由でやむを得ず欠席する場合は、学生サポートセンターで追試の申請をして下さい。

(4) 講義ノート
講義はパワーポイントで行います。各週授業開始日前に主としてMoodleにアップロードし、授業期間終了までアクセスできるようにします。講義内容に関する質問は掲示板に書き込んでください。速やかに回答します。

(5) 評価 大学の規定に基づき評点が全体の60%以上の受講生を合格とします。

(6) 不正行為
課題等の不正提出や不正作成(盗作)、そのほか不正行為が認められた場合は、その時点で厳正な処置を行い、所属学部に報告します。チャットや掲示板での迷惑行為についても同様の処置を行います。

Ⅶ 教材・参考文献

本講義のテキストは山﨑孝史(2022)『「政治」を地理学する―政治地理学の方法論』(ナカニシヤ出版)です。受講生は生協などで入手しておいて下さい。それ以外に必要な教材は主にMoodleを通して提供・指示します。

Ⅷ コミュニケーション

講義に関する教員からの連絡や指示はMoodleからお知らせします。受講生からの質問や意見はMoodleのディスカッション・フォーラムに書き込むことができます。また、教員ウェブサイトにも「質問フォーム」が設置されていますので、こちらからも質問することが可能です。いずれの場合にも速やかに回答します。尚、電子メールによる個別の質問・相談も受け付けます。

Ⅸ その他

講義の課題について相談したいことがある場合は、遠慮なく山崎までご連絡ください。