「地理学概論Ⅰ」第2回討論のテーマ

「地理学概論Ⅰ」第2回討論(11月27日)のテーマは「辺境の保守化」です。沖縄県八重山諸島(概況)では、2010年以降の尖閣諸島をめぐる中国との緊張関係から、政治的な保守化が進んでいます。保守的な中学校公民教科書の選定や自衛隊配備問題をめぐって各島内の世論も二分されるようになっています。今回のディベートのポジションとして、日本の領土の辺境にある八重山諸島において、世論をリードし、かつ分化させるローカル・メディアとして現地で購読されている以下の二紙を選びました。両紙は対照的な地域観と政治観を示しています。参照サイトを熟読した上で、週レポートの用紙に(どちらかといえば)「支持できるポジションとその理由」(①)そして「支持できないポジションへの反論」(②)を記してください。対立の政治地理学的意味や地政学的背景まで理解したい方は拙稿(山﨑2016、2018)をご参照ください(関連部分は読んでおいたほうが良いです)。①と②を記した用紙を事前に準備してディベートに臨んでください。

参照サイト
ポジションA:八重山日報(仲新城誠)「「国境の危機」とは①~⑪」2013年7月2日~15日
ポジションB:八重山毎日新聞「尖閣の政治利用をやめよ」2018年6月20日
        八重山毎日新聞「軍事拠点が攻撃の呼び水に」2018年8月1日

全体の政治地理学的構図
山﨑孝史(2016)「境界、領域、「領土の罠」―概念の理解のために」地理61-6,pp. 88-96
山﨑孝史(2018)「「地政学」から沖縄県政をとらえる」地理63-3,pp. 38-45

「地理学概論Ⅰ」第1回討論のテーマ

「地理学概論Ⅰ」第1回討論(10月23日)のテーマは「学問と戦争」です。第二次世界大戦前に帝国主義諸国で注目された地政学は、戦後大学ではほとんど研究されなくなりました。そこには学問と戦争との関係に関する反省があったと考えられますが、近年(特に21世紀にはいってから)地政学を冠する書籍は多く出版されるようになり、保守的論壇や民間の保守系シンクタンクでも「地政学」に注目する潮流が確認されます。そこで、これまでの講義と議論の内容も踏まえて、今日の「地政学」をめぐる思想潮流について、地理的知識の軍事・外交政策への貢献を必要とする立場と慎重な立場(拙稿ですみません)の二つのポジションから考えてみたいと思います。双方の参照サイト・文献を熟読した上で、週レポートの用紙に(どちらかといえば)「支持できるポジションとその理由」(①)そして「支持できないポジションへの反論」(②)を記してください。①と②を記した用紙を事前に準備してディベートに臨んでください。それぞれのポジションと関わる参考文献も上げておきますので、お時間のある方は学情センターや公共図書館などで参照してください。

参照文献・サイト
ポジションA:関根大助(2017)「ユーラシアの地政学的環境と日本の安全保障―オフショア・バランサーとしての日本の対中戦略の在り方」海洋安全保障情報特報(笹川平和財団)
ポジションB:山﨑孝史(2017)「地政学の相貌についての覚書」現代思想45-18,pp. 51-59

参考文献
週刊ダイヤモンド「特集「激変世界を解く新地政学」」2017年1月28日号
現代思想「特集 いまなぜ地政学か―新しい世界地図の描き方」2017年9月号

「地理学概論Ⅰ」第3週の課題

指定教科書の第3章を読んで以下の問いに答えて下さい。現代の政治地理学の専門的内容に関わるので少し難しいかもしれませんが、講義でも説明しますので、わかる範囲で答えて下さい。「正解」でなくとも構いません。

①第1章で説明した伝統地政学の環境(地理)決定論的、国家(自国)中心主義的アプローチにはどのような「限界」があったと言えるでしょうか。第3章の内容も踏まえて考えて下さい。

②第3章で説明されているウォーラーステインやテイラーは国際政治の動態をどのようにとらえているでしょうか。 それが伝統地政学のアプローチ(問①)とどのように異なっているかを中心に説明して下さい。

教科書の例を参考に、身の回り(一地方)の身近な(政治的)出来事が、実はグローバル大の政治経済的変化や国政の動静(制度や政策の変化)と密接に結びついているような例がないでしょうか。あれば取り上げて、教科書で解説されている「マルチスケール」という観点から説明して下さい。

「地理学概論I」第2週の課題

指定教科書の第1章を読み、戦争と学問との関わりについて、次の三つの問いに答えて来て下さい。第4週の討論の予習でもあります。

①19世紀にヨーロッパで確立された「政治地理学」は「地政学」へと変容していきますが、どのような背景からどのような性格を持った知識の体系に変化していったのでしょうか。

②ドイツや日本の地政学は第二次世界大戦中にどのように(どこまで)戦争と関わり、どのような結末を迎え、戦後どのように評価されたのでしょうか。

③上記①と②を踏まえて、理系を中心とする大学での軍事応用研究の議論について下記のサイトを参照し、自らの意見を述べて下さい。

NHKクローズアップ現代「“軍事”と大学~岐路に立つ日本の科学者たち~」(2016年9月28日)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3868/1.html

日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月24日)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf

2017年度卒業論文

鈴木 まゆ(すずき まゆ)

食品ロス再流通システムの実態と食支援を通じた連携―フードバンク関西を実例に

論文(pdf 1.2MB)

 飽食と貧困という矛盾への気づきと、私自身の「もったいない」という思いからテーマが決まりました。食品ロスに関する研究は地理学ではほとんどなく、環境問題や福祉といった点から語られることの多いこのテーマを、地理学の中でどういった観点で書き進めるか最後まで悩みましたが、山崎先生に何度も面談をしていただく中で方向性が固まって行きました。先生に話すことは自分自身の頭の整理にもなりました。
 参与観察という形で関わっていると、研究対象としている事象が自分の中で当たり前となってしまい、これを論文の中でどう分かりやすく簡潔に伝えていくか悩みました。ボランティアスタッフ方の生の声をもっと反映するべきでしたし、論文の構成に関してはまだまだ再考の余地があります。また、計画当初に考えていたところまで手を伸ばすことができず残念な部分もありますが、多くの方々の協力のお陰で形にすることができました。興味のあることにボランティアとして関わりながら論文を書けたことは貴重な経験となり、学びの多い日々を過ごすことができました。
 最後になりますが、インタビューを受けてくださった方々、ボランティアスタッフの皆様、ご指導してくださった山崎先生、この論文を書くにあたって関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。

私からの一言:参与観察による成果であることに加え、食品ロスとフードバンクとの関係を非経済的な「流通」の問題として地理学的にとらえたユニークな論文です。欲を言えば、自分で集めたデータについてもっと書き込めたらよかったのですが、公務員試験の準備をする中でも自らの問題関心を最後まで見失うことなく、地理学らしい論文に仕上がっています。

中西 広大(なかにし こうた)

大阪市における学校選択制の実態―学校選択制は学校・家庭・地域社会の連携を崩壊させるか

論文(pdf 920KB)

 卒業論文を書くにあたって、山崎先生からの手厚いご指導やご助言をはじめ、聞き取り先の皆様や家族、たくさんの方々に支えていただきました。また執筆中の辛い時期には、地理学コースの仲間たちの存在が大きな助けになりました。本当にありがとうございました。地理学コースに来た時には自分がこのようなテーマで卒業論文を執筆するとは思っていませんでしたが、自分が本当に関心のあることを探究できたのではないかと思っています。 ただ、準備不足でうまくいかないことも多く、研究の準備はどれだけしてもしすぎることはないということを学びました。また、本当に必要な情報を早めに見極め、それを入手するための行動を起こすことの重要性も感じました。この二点を次に向けた反省点としながら、これからの研究に生かしていきたいと思います。

私からの一言:仮説を立ててそれを検証する形で書かれた地理学コースでは稀な論文で、量的な分析と質的な聞き取り調査を組み合わせた方法論的にも特徴のある論文です。そういう点を意識しない論文が多い中で、はっきりとした論証の軸と流れが作れたと思います。統計分析と聞き取りにはさらに踏み込むべき部分が残っているのも事実ですが、後輩にも参考になる論文構成として評価できます。

「現代の地理学」小テスト得点照会(第一期)

これまで2回の小テストの結果を知りたい方は、必ずOCUメールを使って以下のTA松井恵麻さんのアドレスに学籍番号と氏名を明記して照会して下さい。

 ● 照会先アドレス:m17lb002@ab.osaka-cu.ac.jp アカウント名は「エム・いち・なな・エル・ビー・ぜろ・ぜろ・に」

 ● 照会期間:12月7日から13日の午後5時まで(厳守)。

 ● OCUメール以外のアカウントからや照会期間を過ぎた照会には応じられません。

第4回のテストの後にもう一度照会期間を設けます。