論文指導

2011年度卒業論文

西岡 美樹(にしおか みき) ☆平成23年度文学部優秀卒業論文

「共生」の真実 外国人集住地域における地域の変容―東京都新宿区・大久保地域を事例に

論文(pdf 1.0MB)

 私は卒論のテーマとして「外国人の集住」について扱えたらいいな、と漠然と考えていた所、山崎先生に大久保地域にフィールドワークに連れていっていただいたのがきっかけで対象地域はすんなりと決めることができました。しかし、その地域でどのようなテーマを扱うかを決めることに苦労し、それも先生に方向性を示していただきました。扱ったテーマが決してポジティブなものではなく、また土地勘のない地域での調査は心折れそうなときもありましたがインフォーマントの方の暖かさ、先生の指導、地理学コースの皆さんに支えられて執筆することができました。本当にありがとうございました。

私からの一言:地理学コースからは久しぶりの優秀論文賞受賞論文です。大久保は長年「多文化共生」の先進地として注目されてきましたが、近年は「韓流の聖地」といった形での場所の形成(商品化・メディア化)が進んでいます。その一方で旧来からの日本人商店の経営は圧迫され、排除されていきます。こうしたエスニック・タウン化を冷静に捉えた論考になりましたね。遠方のフィールド調査に取り組んだ秀作です。

本多 あずさ(ほんだ あずさ)

在日ベトナム人の移住から見た定住―神戸市長田区を事例として

論文(pdf 505KB)

 卒論に取りかかった時期は遅くなってしまいましたが、月1回の指導会のおかげでモチベーションを保つことができました。ベトナム人の方への聞き取り調査では、言葉の点で対象が狭まってしまい、また調査人数も十分でなかったのが悔やまれます。協力者探しでもインフォーマントの人脈に頼った部分が大きいので、自分で移動した人を探すくらいの行動をすれば、「移動」の側を主に持ってこれただろうと思います。一人で飛び込んでいく度胸を身につけることが今後の課題です。しかし、1人に対して2回の聞き取りを行ったことで、2回目には新しい話を引き出せたという経験をしました。聞き取り調査では相手方との関係性が大事だと感じた、印象に残るできごとでした。

私からの一言:公務員志望の卒論生は採用まで時間がかかり、卒論への取り組みが遅れがちです。そういうこともあって、フィールドやインフォーマントへの接触は割と早くからできていましたね。ただ、インフォーマントがそもそも定住者であり、別の地域との比較研究が十分できなかったという点で、本来の関心に沿って論文を書くことが難しかったのかと思います。しかし、論述は筋道立っており、考察も明確で、論文としての完成度は高かったです。東京の区役所で同様の問題にも取り組まれる機会があるかもしれませんね。

山本 達也(やまもと たつや)

町家店舗を活用したまちづくり―京都市中京区を事例として

論文(pdf 2.3MB)

 おおまかな構想としては、三回生のころから教員の方々にご指導いただけた事もあって、四回生になった時には、ほぼ固まっていました。しかし、構想が固まってからの動き出しが非常に遅く、結局完成したのは提出直前となってしまいました。また、山崎先生からの熱い指導のおかげで、奮起した部分もあったように思います。
 内容に関しては、当初に予想していた結論とは違うものになりましたが、京都の町家店舗の実態に、より即したものになったと感じています。
 今回の卒業論文を執筆するにあたって、お世話になった教授方、インフォーマントの方々には大変ご迷惑もかけたと思っています。ありがとうございました。

私からの一言:指導教員の仕事は尻たたきです。放っておくとぎりぎりまで動こうとしない学生さんのペースメーカーなのです。しかしテーマは現代京都の中心市街地における町屋利用をめぐる重要な課題であり、問題点を的確に把握できた論文に仕上がっています。よって、査読教員の評価も良かったです。今後は京都でのご活躍をお祈りしています。