論文指導

2022年度卒業論文

西田 歩莉(にしだ あゆり)

創作作品における遊郭表象―『鬼滅の刃』と『この世界の片隅に』との比較から

論文(pdf 4.72MB)学内限定公開

 卒業論文執筆にあたって指導教員の山﨑先生には厚くお礼申し上げます。元々文化の方面にばかり興味が向いていた中でどう「地理学」の枠組みで研究をしようかと悩んでいた時、山﨑先生に「遊郭」を提示して頂いたことが天啓のように感じたのを思い出します。どうしても学術的な問題とぶつかるテーマな為、これで良いのかと葛藤することもありましたが、山﨑先生のご指導の元、なんとか完成させることができました。個人的にはとても楽しく卒業論文を書くことが出来た為、このテーマで、そして指導教員が山﨑先生で良かったです。

私からの一言:マンガやアニメで描かれる場所という、地理学コースではほとんど扱われなかったテーマに取り組むということで、分析方法を色々工夫しないといけない論文でしたね。しかし、アニメ化されたマンガ二作品を作品間と媒体間で比較する構成にすることでかなり説得力と読み応えのある論考になったと思います。

増田 一輝(ますだ かずき)

宇都宮市のLRT導入計画はなぜ実現したのか―事業広域化と都市ビジョンの検討から

論文(pdf 1.97MB)

 宇都宮市のLRT事業について扱うことは決まっていましたが,調べれば調べるほど,その情報量の多さから何をどのように書けばよいのか,苦悩する日々でした。山崎先生にはその都度アドバイスをいただき,方向性を示して下さいました。本当にありがとうございました。内容に関しては,出来事をうまくまとめるのに精一杯で,単調な議論になってしまったことを悔やんでいます。もっと地理学的な視点に軸足を置くことができれば,面白みのある研究になったと思います。これもひとえに、自分の勉強不足を痛感しています。とはいえ,非常に興味深いこのテーマで一つのものを書き上げることができたことは嬉しく,その過程でたくさんの学びを得ることができました。卒論を終えた今はただ,もう少しで開業する芳賀・宇都宮LRTに乗ることを楽しみにするばかりです。

私からの一言:事業計画が紆余曲折を経て実現に至る過程は収集した資料から良く描けていたのですが、テーマが早めに決まっていたのに対して、資料収集の時期が遅れ気味で、集めた資料からさらにどんな考察を展開できるかについて考える時間が少し足りなかったかもしれませんね。日本で初めての新設LRTがこれからどう評価されていくかは確かに注目されますね。

山野井 愛友(やまのい あゆ)

富田林寺内町の持続可能なまちづくりと女性の役割

論文(pdf 1.82MB)学内限定公開

 以前から興味のあった空き家問題にジェンダーの視点を取り入れたことで、私自身「まちづくり」についての新たな見方や考え方を得られたと感じています。
 しかし、女性についての論文であるにも関わらず、女性店主への取り調査を十分に行うことができなかったため、偏った視点からの論文になってしまいました。このような点は反省すべき点であり、まだまだ突き詰めていく必要がある点だと思います。
 最後になりましたが、卒業論文執筆において聞き取り調査にご協力いただいた皆様、幾度も貴重なご指導をいただきました山崎先生に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

私からの一言:大都市郊外の重伝建地区におけるまちづくりをめぐる構造的問題をジェンダー(女性就労)の視点から切り込むという大変興味深い論考です。そうした文脈の中で女性の主体性をどこまで把握できたかという点ではやや物足りなさが残るものの、フィールドに何度も出かけ、地域の実態を浮き彫りにした点は評価できます。

芳田 翠子(よしだ みどりこ)

無居住神社における神職・氏子の役割と氏子意識―奈良市内の3神社を事例に

論文非公開(閲覧を希望される方は山﨑までご連絡ください)

要旨:本研究では、奈良市内の氏神神社3社を事例にどのような形で神社兼務が行われ、どのような形で住民が氏子とみなされ、神社と関わっていくのかを明らかにする。調査の結果、信仰の内容によらず、神社運営の主体となる周辺住民との合意によって神職は神社の兼務を行うことが明らかになった。さらに、無居住神社では地縁だけではなく血縁、氏子費の納入、神社との日常的な関係性の深さが氏子として認められる要素となることが示されたが、そうした氏子は減少傾向であり、神社維持のための新たな取り組みが模索されている。

コメント:卒業論文の執筆にあたり、聞き取り調査にご協力いただいた神職・氏子の皆様、2年にわたり指導教員を務めてくださった山崎先生に厚く御礼申し上げます。
 地理学コースに所属する以前から神社に関心を持っていましたが、自身の興味と論文のテーマとを上手く繋げられず難儀し、またコロナ禍や就職活動の中で自分を見失ってしまったことで、方向性が定まるまでにかなりの時間を費やしてしまいました。山崎先生が親身になって指導してくださったこともあり、なんとか論文を完成させることはできましたが、初期の迷走が調査時間や内容の不足を招き、現代の宗教観と関連させた発展的な考察まで至らなかった部分は反省点です。
 一方で、紆余曲折を経て最終的に無居住神社をテーマにできたことで非常に自分らしい論文になったとも感じています。また、兼務をされている神職の方と、日常管理を担われている氏子の方々の双方にお話を伺えたことは、神社の実態を考える上で得難い経験となりました。失敗や悩んだ点も含め、卒業論文執筆の一連の学びを今後の生活で活かしていければと思います。

私からの一言:体調の問題もありながら、卒論を書き上げることができたことがまず良かったと思います。しかし、テーマは大変興味深く、現代における神道と地域社会との関係をつまびらかにした点で評価できる論文です。地理学が宗教を扱うなら、こうしたアプローチがありうるということを、少子高齢化という現代的な文脈から明らかにした論文でもあります。