2022年度卒業論文

西田 歩莉(にしだ あゆり)

創作作品における遊郭表象―『鬼滅の刃』と『この世界の片隅に』との比較から

論文(pdf 4.72MB)学内限定公開

 卒業論文執筆にあたって指導教員の山﨑先生には厚くお礼申し上げます。元々文化の方面にばかり興味が向いていた中でどう「地理学」の枠組みで研究をしようかと悩んでいた時、山﨑先生に「遊郭」を提示して頂いたことが天啓のように感じたのを思い出します。どうしても学術的な問題とぶつかるテーマな為、これで良いのかと葛藤することもありましたが、山﨑先生のご指導の元、なんとか完成させることができました。個人的にはとても楽しく卒業論文を書くことが出来た為、このテーマで、そして指導教員が山﨑先生で良かったです。

私からの一言:マンガやアニメで描かれる場所という、地理学コースではほとんど扱われなかったテーマに取り組むということで、分析方法を色々工夫しないといけない論文でしたね。しかし、アニメ化されたマンガ二作品を作品間と媒体間で比較する構成にすることでかなり説得力と読み応えのある論考になったと思います。

増田 一輝(ますだ かずき)

宇都宮市のLRT導入計画はなぜ実現したのか―事業広域化と都市ビジョンの検討から

論文(pdf 1.97MB)

 宇都宮市のLRT事業について扱うことは決まっていましたが,調べれば調べるほど,その情報量の多さから何をどのように書けばよいのか,苦悩する日々でした。山崎先生にはその都度アドバイスをいただき,方向性を示して下さいました。本当にありがとうございました。内容に関しては,出来事をうまくまとめるのに精一杯で,単調な議論になってしまったことを悔やんでいます。もっと地理学的な視点に軸足を置くことができれば,面白みのある研究になったと思います。これもひとえに、自分の勉強不足を痛感しています。とはいえ,非常に興味深いこのテーマで一つのものを書き上げることができたことは嬉しく,その過程でたくさんの学びを得ることができました。卒論を終えた今はただ,もう少しで開業する芳賀・宇都宮LRTに乗ることを楽しみにするばかりです。

私からの一言:事業計画が紆余曲折を経て実現に至る過程は収集した資料から良く描けていたのですが、テーマが早めに決まっていたのに対して、資料収集の時期が遅れ気味で、集めた資料からさらにどんな考察を展開できるかについて考える時間が少し足りなかったかもしれませんね。日本で初めての新設LRTがこれからどう評価されていくかは確かに注目されますね。

山野井 愛友(やまのい あゆ)

富田林寺内町の持続可能なまちづくりと女性の役割

論文(pdf 1.82MB)学内限定公開

 以前から興味のあった空き家問題にジェンダーの視点を取り入れたことで、私自身「まちづくり」についての新たな見方や考え方を得られたと感じています。
 しかし、女性についての論文であるにも関わらず、女性店主への取り調査を十分に行うことができなかったため、偏った視点からの論文になってしまいました。このような点は反省すべき点であり、まだまだ突き詰めていく必要がある点だと思います。
 最後になりましたが、卒業論文執筆において聞き取り調査にご協力いただいた皆様、幾度も貴重なご指導をいただきました山崎先生に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

私からの一言:大都市郊外の重伝建地区におけるまちづくりをめぐる構造的問題をジェンダー(女性就労)の視点から切り込むという大変興味深い論考です。そうした文脈の中で女性の主体性をどこまで把握できたかという点ではやや物足りなさが残るものの、フィールドに何度も出かけ、地域の実態を浮き彫りにした点は評価できます。

芳田 翠子(よしだ みどりこ)

無居住神社における神職・氏子の役割と氏子意識―奈良市内の3神社を事例に

論文非公開(閲覧を希望される方は山﨑までご連絡ください)

要旨:本研究では、奈良市内の氏神神社3社を事例にどのような形で神社兼務が行われ、どのような形で住民が氏子とみなされ、神社と関わっていくのかを明らかにする。調査の結果、信仰の内容によらず、神社運営の主体となる周辺住民との合意によって神職は神社の兼務を行うことが明らかになった。さらに、無居住神社では地縁だけではなく血縁、氏子費の納入、神社との日常的な関係性の深さが氏子として認められる要素となることが示されたが、そうした氏子は減少傾向であり、神社維持のための新たな取り組みが模索されている。

コメント:卒業論文の執筆にあたり、聞き取り調査にご協力いただいた神職・氏子の皆様、2年にわたり指導教員を務めてくださった山崎先生に厚く御礼申し上げます。
 地理学コースに所属する以前から神社に関心を持っていましたが、自身の興味と論文のテーマとを上手く繋げられず難儀し、またコロナ禍や就職活動の中で自分を見失ってしまったことで、方向性が定まるまでにかなりの時間を費やしてしまいました。山崎先生が親身になって指導してくださったこともあり、なんとか論文を完成させることはできましたが、初期の迷走が調査時間や内容の不足を招き、現代の宗教観と関連させた発展的な考察まで至らなかった部分は反省点です。
 一方で、紆余曲折を経て最終的に無居住神社をテーマにできたことで非常に自分らしい論文になったとも感じています。また、兼務をされている神職の方と、日常管理を担われている氏子の方々の双方にお話を伺えたことは、神社の実態を考える上で得難い経験となりました。失敗や悩んだ点も含め、卒業論文執筆の一連の学びを今後の生活で活かしていければと思います。

私からの一言:体調の問題もありながら、卒論を書き上げることができたことがまず良かったと思います。しかし、テーマは大変興味深く、現代における神道と地域社会との関係をつまびらかにした点で評価できる論文です。地理学が宗教を扱うなら、こうしたアプローチがありうるということを、少子高齢化という現代的な文脈から明らかにした論文でもあります。

 

2021年度卒業論文

川﨑 汐璃(かわさき しおり)

大阪市北区堂山町におけるゲイバーの集積と異性愛者との関わり

論文(pdf 1.12MB)学内限定公開

私からの一言:これまで地理学コースのセクシュアリティの研究に取り組んだ4年生はおられたのですが、この論文が卒論としては初めて提出されました。その点で貴重なのですが、単にゲイバー集積の記述にとどまらず、異性愛者の利用者との関係から、ゲイバーの在り方を照らし出そうとした着眼点も評価できると思います。

小島 尚子(こじま なおこ)

基地の街の記憶とその資源化―沖縄市コザ地区の取り組みから

論文(pdf  2.06MB)

 調査にご協力いただいた沖縄市コザの皆様、そしてテーマ決定からご指導いただいた山﨑先生に、心より感謝申し上げます。
 就職活動が長引いたことや優柔不断な性格が災いし、調査地の決定がかなり遅くなってしまいました。期間が限られていたことやコロナ禍という情勢もあり、はじめはオンラインのみで調査をするか迷いましたが、山﨑先生に背中を押していただいてなんとか現地調査を実施できました。その結果、予定していなかった人との出会いがあったり、基地の内側を特別に見学させていただいたりして、現地に赴いたことで得られたものは非常に大きかったです。
 執筆においては、3回生の演習で決めたテーマである「ダークツーリズム」という枠組みでの考察までたどりつけなかった等、未熟な点が多々ありました。ただ、コザが歩んできた歴史と今に触れたことで、ダークツーリズムを考えることの難しさを体感することができました。また、校正を頼んだ家族から「コザに行ってみたくなった」と言われたとき、書ききってよかったと思いました。私も、コザを再訪したいと思います。

私からの一言:ダークツーリズムの代表ともいえる「平和教育」の意味について考えるなら、おそらく沖縄はベストなフィールドの一つですね。その歴史や地域社会まで深く立ち入るには調査期間が短かったかもしれませんが、まとまりのある論文になったと思います。

野口 和樹(のぐち かずき)

阪神高速大和川線の建設と住民運動―環境正義の視点から

論文(pdf 1.20MB)

 卒論指導教員の山崎先生、高速道路公害から子どもを守る会のK様、阪神高速株式会社のN様、K様をはじめ、卒業論文の執筆に関わってくださったすべての皆さま感謝申し上げます。
 教員採用試験や教育実習などもあり、本格的な調査を始められたのが遅くなってしまい、詰めの甘い部分が多々出てきたことは反省すべき点です。調査の対象も、ぼんやりとした研究の進め方も早い段階で決めていたのに、このような状態になったのは本当に私の至らない所だと思います。
 聞き取り調査をしている中で感じたことは、すべての人が納得することはやはり難しいということです。阪神高速様が仰っていることも納得できましたし、守る会様が仰っていることも納得できました。卒業論文中では言及はしませんでしたが、堺市役所の方など、その他電話でお話を伺った方の意見も納得できるものがありました。十人十色の意見がある中で、合意形成をしながら建設していくことの難しさを改めて実感しました。
 その他にも、普段何気なく走っている高速道路の成り立ち、トンネルの構造など、調査中は本当に学びの多い時間を過ごさせていただきました。卒業論文に関わってくださったすべての皆さまに改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

私から一言:確かに「住民」という括りの問題点やその代表としてどういった組織を想定すべきかなど環境正義論の観点から掘り下げるべき課題もありましたね。それは民主主義の重要な問題でもありますので、教育の現場を通して探求していかれることを期待しています。

2020年度修士論文・卒業論文

修士論文

貫名 隆洋(ぬきな たかひろ)

ベトナム人の定住化と「長田」の変容―マルチスケールの観点から

論文(pdf 3.33MB)学内限定公開
公表論文(空間・社会・地理思想25,14-73,2022年)

 まずは修士論文執筆においてアンケート調査にご協力いただきました長田のベトナム人の皆様、ベトナム夢KOBEの皆様、地理学教室の先生方・先輩・同期・後輩、卒業論文の際からご指導いただいた山﨑先生に心よりお礼申し上げます。
 卒業論文でも扱った外国人集住を、修士の2年間も対象地域こそ変更したものの、3年以上にわたり継続して研究することができました。この期間に何度も自分がなにを明らかにしようとしているかを見失ってしまいました。そのような時には、月に一度の面談で山﨑先生からアドバイスをしていただいたおかげで迷いながらも最後まで研究を進めることができました。
 ただ、方向性が定まらないまま研究課題の設定に時間をかけすぎたこともあり、現地での調査が不十分なものになってしまいました。実際に書きだしたタイミングになって「あれも聞いておけばよかった」や「これも調べておくべきだった」などの足りないものが多数あることに気が付きましたが、時期が遅くどうしようもないまま論文にすることになってしまいました。まだまだ、やれること・やるべきことがあるため、もっと良いものが書けたのではないかと悔しい部分も多いですが、自分の興味関心から外れることなく最後まで執筆できたことに関しては幸せに思います。

私からの一言:なぜこのテーマを選び、何をどう論じたいのかという点について絞り切れなかったという部分はありますが、それを補うために研究対象に沿った理論的、方法論的視角を導入することによって、体系性のある分析・考察ができたと思います。さらに推敲を重ねて雑誌論文として公刊されることを心待ちにしております。

 

卒業論文

井元 遼太郎(いもと りょうたろう)

子どもの生活時間の変化と放課後児童クラブの役割

論文(pdf 1.32MB)

 卒業論文執筆にあたって調査にご協力いただいた皆様、指導教員の山﨑先生には厚くお礼申し上げます。「私たちが小学生だった頃と今の小学生では、遊びの形が変わっているのではないか?」という些細な疑問から、「子どもの遊び」というテーマを核にして進めてきました。新型コロナウイルス感染症の影響や、子どもを調査対象にする難しさから、思い通りの調査ができたとは言えません。しかしながら、私が長期間関わり続けていた放課後児童クラブについて、多少なりとも地理学的な視点から、その意義を考えることができたことについては嬉しく思います。
 今後も子どもと関わっていくことになるため、本論文の執筆により得た知見や経験を活かしていきたいと考えています。

私からの一言:新型コロナの影響による教育実習時期の変更、質問紙から参与観察への調査方法の変更、データアーカイブと統計分析の利用など、イレギュラーなことが続きましたが、考察の枠組みが明確な論文になりました。確かに、子どもの実際の遊び空間の分析にまで進めなかったのは残念ですが、この論文で示された問題意識を失うことなく、教育に従事していただければと思います。

2019年度修士論文・卒業論文

修士論文

中西 広大(なかにし こうた) ☆令和元年度文学研究科優秀修士論文

大阪市における学校選択制の地理的検証―義務教育と公共選択論との関係から

論文(pdf 2.7MB)

 まずは聞き取り調査にご協力いただいたみなさま、地理学教室の先輩・同期・後輩・先生方、卒論のテーマ決めから3年半にわたりご指導いただいた山﨑先生、そして本稿を執筆するにあたりご支援・ご協力を賜りました全ての方に、深く御礼申し上げます。みなさまのご支援・ご協力を論文という形にできたことがとても嬉しいです。本当にありがとうございました。
 約3年半にわたり同じテーマと向き合ってきましたが、これだけの期間ひとつの物事を突き詰めて考えるという経験は初めてでした。しかし、いざ論文を執筆する段階になっても、本当に勉強不足で不十分な点が多いことを痛感しました。卒論執筆時同様、どれだけ準備してもしすぎることはないということ、そして、物事を究める作業には終わりがないということを学びました。力が及ばず議論を突き詰めることができなかった点もあり、悔しい思いがありますが、この経験を今後の人生の糧にしていきたいと思います。
 行き詰まり心折れそうになった時には、地理学教室の仲間や先生方の存在がとても大きな支えになりました。自分が悩んだ時に、相談し、議論し、談笑できる仲間や先生方がいたことは、とても幸せなことでした。あらためて感謝するとともに、後輩のみなさまにも、迷ったり悩んだりした時には相談できる人が周りにたくさんいるということをお伝えしたいです。ぜひとも実りの多い、後悔のない大学・研究生活を送ってください。

私からの一言:学部3年生の後期から前期博士課程2年生に至るまで理論的視角(公共選択論)に基づく一貫したテーマ(学校選択制)を追求できたことがこの優れた論文につながったと思います。コメントが少し謙遜しすぎの嫌いがありますが、これからは学校教育の現場でこれまで得られた知見を活かしていって下さい。

 

卒業論文

市後 恭佳(いちご きょうか)

保育所建設への反対と受容―東京都目黒区、千葉県市川市、兵庫県芦屋市の事例から

論文(pdf 1.9MB)

 まずは卒業論文執筆において聞き取り調査にご協力いただいた皆様、未熟な私に熱心に指導してくださった山崎先生と木村先生に心から感謝申し上げます。
 このテーマに決めたきっかけは、東京都港区の南青山で起きた児童相談所建設反対運動に関する報道でした。報道を見ただけでは、南青山という地域に対してマイナスな印象を抱いてしまうことになり、それは良くないのではないかと思いました。ここからヒントを得て、保育所建設反対運動の事例そのものではなく、発生前から発生後まで追って、反対運動が起きた地域のことを正しく理解しようと思い、このテーマに決めました。この論文が当初思い描いていたところまで及んでいるかは分かりませんが、自分の関心に沿って論文を執筆して形にできたことは嬉しく思います。

私からの一言:府外、しかも関東の事例を対象に全国的な視野から反対運動を検討し、問題の一般性を明らかにしようとした意欲的な論文です。これからの新生活では類似の運動を直接目にすることもあるかもしれませんね。

栗田 汐里(くりた しおり)

常盤小学校区における子ども食堂の必要性と役割

論文(pdf 900KB)

 子ども食堂をテーマにし参与観察を通して調査するということは早い段階で決まっていたのですが、詰めが甘かったために執筆の最初から最後までずっと方向性に悩んでいました。4年間のその場しのぎの学習が最後になって自分を苦しめることになりました。執筆が進めば進むほど調査の甘さを感じることが多く、早めに論文の構成を考え調査方法を何度も練り直すことが重要なのだと思いました。
 このように正直反省点しかないのですが、この卒論執筆は、今までボランティア活動に対して抱いていたイメージを大きく変えるきっかけとなり、少しの勇気があればどんな人でも誰かの役に立てるということを知りました。また、全く知らないコミュニティに飛び込み人間関係を構築することは、難しいものではありましたが間違いなく今後の人生に役立つことになると思います。
 最後になりますが、聞き取り調査にご協力いただいた皆様、地理学教室の方々、そしてテーマ設定から執筆までご指導いただいた山崎先生、皆様のお力添え無しには論文を完成させることはできませんでした。本当にありがとうございました。

私からの一言:食を介した子どもの「居場所」が持つ意義を探るという深いテーマだけにアプローチや分析方法の点で難しい点があったと思います。しかし、実際に子ども食堂の活動に関わり、参与観察することから、外からは見えないものが見えましたね。これからもこうした問題について考え続けてもらえればと思います。

村上 ひかる(むらかみ ひかる)

変容する葬儀と死の受容―複数地域における活動団体からの考察

論文(pdf 1.3MB)

 卒業論文を書くにあたって、山崎先生はもちろん聞き取り先の方々に多大なるご協力を賜りました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 特に、葬儀という地理学教室では比較的珍しいテーマで最後まで書ききることができたのは、3年生の演習からご指導くださいました山崎先生のこまめな面談、アドバイスがあったからだと感じます。
 地理学とテーマをどのようにしてつなげていくか、先行研究の整理や実地調査にとりかかってからわかってきた部分もあり、自分にとって価値のある経験になりました。

私からの一言:共同体的な葬送が合理化・私事化されていく潮流の中で、どのように死の「共同性」が回復されようとしているか。そういうテーマで取り組まれた興味深い論文です。各現地調査の期間は短かったのですが、条件の異なる地域の事例から炙り出された新しい「死の受容」の在り方は大変示唆に富みます。

2018年度卒業論文

佐藤 璃奈(さとう りな)

尾道三部作が創り出す場所へのイメージ―イメージの形成とその影響

論文(pdf 917KB)

 卒業論文を書くにあたってサポートしていただいた山崎先生をはじめ、学部の先輩方や仲間にはたくさん助けてもらい、非常に大きな支えとなりました。一人では絶対に完成させることができなかったと、今になってひしひしと感じています。支えてくださった皆様、誠にありがとうございました。
テーマを決めるところから、それを地理学とどう繋げていき、どのように研究を進めていくのか。最初から最後まで頭を悩ませながら進めていました。一体いま自分は何を明らかにするために調査しているのかわからなくなるときもあり、その度に自分の手が止まってしまうことが何度もありました。しかしそんな時、月に一度山崎先生に面談をしていただくことで頭の中を整理することができました。何を考え、何に悩んでいるのかを言葉にして誰かに伝え、整理することが調査を進めていくうえでいかに重要なものかを学ぶことができました。
 お世辞にも完成度が高いとは言えないものとなりましたが、4年間の集大成となるものを自分の手で完成させる、というところに大きな意味があったのではないかと思います。執筆にあたって学んだことを、今後の生活においても活かしていけたらと思います。

私からの一言:尾道を実際訪れ、メディア(新聞記事)が創り出すイメージを分析する方法まではうまく固められたのですが、具体的な地域の形成とどう関わっているかを更なる現地調査で明らかするまでの時間がなかった点が残念。

瀧口 都(たきぐち みやこ)

伝統野菜の地域性を維持する取り組みの実態と課題―大阪府なにわの伝統野菜を事例に

論文(pdf 618KB)

私からの一言:ここでは口頭試問前に提出された論文をアップロードしています。種子から伝統野菜の地域性を考えるという興味深い論文ですので、ぜひとも最終版をお届けください。

貫名 隆洋(ぬきな たかひろ)

外国人の地域への定住過程における公営住宅の役割―群馬県伊勢崎市のベトナム難民を事例に

論文(pdf 1.26MB)

 今回、卒業論文を執筆して、次の2点の重要性を感じました。1つ目は、自分の中で何を明らかにするかを明確にすることです。自分の場合、3回生の演習の時から外国人の居住には興味があったものの、いざ卒業論文を書くとなると自分が明らかにしたいことがはっきりと定まりませんでした。そのため、調査対象や聞き取り相手の決定に時間がかかってしまいました。
 2つ目は、地理学における現地調査の重要性です。現地で調査することでしか分かってこないことや、つくることのできない人間関係が多くありました。現地に行く時期が遅かったことで、卒業論文の内容が中途半端なものとなってしまいました。調査は可能な限り時間をかけて早い段階から行うべきでした。
 最後に、卒業論文を執筆するにあたり、インタビューに協力していただいた皆様や聞き取り調査を快く受けて下さった皆様には、大変お世話になりました。また、卒業論文の構想の段階から実際に執筆する段階まで細かく丁寧にご指導いただいた山崎先生をはじめ、地理学教室の先輩方・同期には、大変感謝しております。

私からの一言:大阪にいながら敢えて伊勢崎というフィールドを選んで、外国人の居住をテーマに取り組まれたこと自体高く評価できます。現地調査を始めるタイミングが遅れると、考察の期間も短かくなるので、テーマの絞り込みが早いともっと深められたと思います。大学院での研究への教訓にしてください。

2017年度卒業論文

鈴木 まゆ(すずき まゆ)

食品ロス再流通システムの実態と食支援を通じた連携―フードバンク関西を実例に

論文(pdf 1.2MB)

 飽食と貧困という矛盾への気づきと、私自身の「もったいない」という思いからテーマが決まりました。食品ロスに関する研究は地理学ではほとんどなく、環境問題や福祉といった点から語られることの多いこのテーマを、地理学の中でどういった観点で書き進めるか最後まで悩みましたが、山崎先生に何度も面談をしていただく中で方向性が固まって行きました。先生に話すことは自分自身の頭の整理にもなりました。
 参与観察という形で関わっていると、研究対象としている事象が自分の中で当たり前となってしまい、これを論文の中でどう分かりやすく簡潔に伝えていくか悩みました。ボランティアスタッフ方の生の声をもっと反映するべきでしたし、論文の構成に関してはまだまだ再考の余地があります。また、計画当初に考えていたところまで手を伸ばすことができず残念な部分もありますが、多くの方々の協力のお陰で形にすることができました。興味のあることにボランティアとして関わりながら論文を書けたことは貴重な経験となり、学びの多い日々を過ごすことができました。
 最後になりますが、インタビューを受けてくださった方々、ボランティアスタッフの皆様、ご指導してくださった山崎先生、この論文を書くにあたって関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。

私からの一言:参与観察による成果であることに加え、食品ロスとフードバンクとの関係を非経済的な「流通」の問題として地理学的にとらえたユニークな論文です。欲を言えば、自分で集めたデータについてもっと書き込めたらよかったのですが、公務員試験の準備をする中でも自らの問題関心を最後まで見失うことなく、地理学らしい論文に仕上がっています。

中西 広大(なかにし こうた)

大阪市における学校選択制の実態―学校選択制は学校・家庭・地域社会の連携を崩壊させるか

論文(pdf 920KB)

 卒業論文を書くにあたって、山崎先生からの手厚いご指導やご助言をはじめ、聞き取り先の皆様や家族、たくさんの方々に支えていただきました。また執筆中の辛い時期には、地理学コースの仲間たちの存在が大きな助けになりました。本当にありがとうございました。地理学コースに来た時には自分がこのようなテーマで卒業論文を執筆するとは思っていませんでしたが、自分が本当に関心のあることを探究できたのではないかと思っています。 ただ、準備不足でうまくいかないことも多く、研究の準備はどれだけしてもしすぎることはないということを学びました。また、本当に必要な情報を早めに見極め、それを入手するための行動を起こすことの重要性も感じました。この二点を次に向けた反省点としながら、これからの研究に生かしていきたいと思います。

私からの一言:仮説を立ててそれを検証する形で書かれた地理学コースでは稀な論文で、量的な分析と質的な聞き取り調査を組み合わせた方法論的にも特徴のある論文です。そういう点を意識しない論文が多い中で、はっきりとした論証の軸と流れが作れたと思います。統計分析と聞き取りにはさらに踏み込むべき部分が残っているのも事実ですが、後輩にも参考になる論文構成として評価できます。

2016年度卒業論文

池田 朱里(いけだ あかり)

祭礼の継承と地域コミュニティのつながりの強化―流し節正調河内音頭を事例に

論文(pdf 490KB)

 この卒業論文を作成するにあたっては、流し節正調河内音頭保存会のみなさまに多大なるご協力をいただきました。練習のない日にも関わらず、お忙しい時期にお集まりいただき誠にありがとうございました。また、テーマ決めの段階から執筆に至るまで、山﨑孝史教授には大変お世話になりました。取りかかりが遅かったために、うまく執筆できずに悔しい点も残ってしまいましたが、無事この論文を完成させることができたのは、お世話になったすべてのみなさまのおかげです。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。

私からの一言:野外調査のリハーサルとして選んだ八尾市の事例がそのまま卒論の対象になったので、対象になった保存会についてしっかり書けています。ただ、他の組織まで対象を広げるのは時間的に難しかったですね。

服部 楓(はっとり かえで)

地理的犯罪データ分析の防犯活動への活用可能性

論文(pdf 1MB)

 3年生の演習時から、犯罪に関する卒業論文を書きたいという漠然としたこだわりがありました。しかし、外国や日本の先行研究分析を行ううちに、卒業論文で扱うことのできるデータに限りがあることを知りました。また、実際に調査地を大阪府八尾市に設定し、調査を開始してからも、聞き取り調査などは積極的に行ったため、質的データは一定得ることができましたが、客観的に判断できる犯罪の量的データの取得に困難を感じました。安まちアーカイブデータを入手してからは、データを用いた分析手法について試行錯誤を行う期間が長く、一歩先の調査まですることが出来なかったことが心残りです。しかし、自分がかねてより関心のあったテーマはぶらさず、八尾市役所の人とも協力して研究することができたため、とてもいい経験になりました。山崎先生には面談を沢山設定して頂き、その度に適切なアドバイスを頂いたことを感謝致します。ありがとうございました。

私からの一言:犯罪分析にはデータによる客観的な検証が必要なのですが、入手が遅れてしまったのがちょっと残念でした。しかし一年以上卒論のテーマの方向性を変えることなく、終始たゆまず課題に取り組まれた姿勢には大変感心しました。就職先の保険会社でも卒論の知見を活かして下さい。

桝屋 知基(ますや ともき)

地域ブランドにおける地名選択と生産過程における空間スケール

論文(pdf 686KB)

 卒業論文執筆にあたり、一番困難かつ重要なのはテーマ設定の作業であると感じております。私の場合、最終的なテーマが決まったのは12月に入ってからでした。そこから新しく必要なデータを集め出すのは時間的に困難で、以前から収集していた資料やデータを用いて執筆しました。テーマについて、もっと早く、そしてもっと深いものを設定できていれば、より多く、詳細なデータを収集することができ、執筆や考察の作業もスムーズにいくと考えられます。また、執筆にあたり、担当教授の山崎先生には大変お世話になりました。この場を借りて、厚くお礼申し上げます。

私からの一言:卒論のテーマ設定に時間がかかり、思うように論文を書けなかったという感想をいただくことが多々あります。今回は、自分の関心にこだわられていたので、ぎりぎりまで尊重するスタンスでおりました。最終的に、地域ブランドと地名のスケールという興味深いテーマに落ち着きました。悩まれた分だけストーリー性のある論文になったと思います。

2015年度博士論文・卒業論文

博士論文

今野 泰三(いまの たいぞう)

ヨルダン川西岸地区におけるイスラエル入植地と民族宗教派入植者に関する考察―死/死者の景観と規範共同体の境界

論文の詳細 論文原文(10.67 MB)

 

卒業論文

藤田 梨花(ふじた りか)

「大阪産(もん)」からみる都市近郊農産物の空間的広がり

論文(pdf 626KB)

 卒業論文のテーマがなかなか絞れずに、テーマ設定だけに一年弱かかりました。 山崎先生にアドバイスをいただいて4回生になってからようやくテーマが決まった状態でした。 そのため、卒業論文のための調査期間、執筆期間ともに十分な時間がとれず、満足のいくまで調査は行えなかったというのが正直な感想です。 聞き取りの数を増やし、仮説を裏付けるだけのデータをもっと収集することができれば、また違う結果も出てきたのではないかと思います。最後になりましたが聞き取りにご協力いただいた方々、そしてアドバイスをしてくださった山崎先生、ご協力、ご指導いただき本当にありがとうございました。取りかかりが遅かった私が卒業論文をここまで完成することができたのは、皆様のご協力があったからだと思います。本当にありがとうございました。

私からの一言:当初から「食」への関心は一貫していましたが、論文のテーマが絞り込めなかった理由は、就活の内定時期のずれ込みや対象地域選定の遅れが影響したと思います。社会に出て物事に遅疑逡巡する時は、失敗を恐れず「えいやっ」と決めてかかってください。

2014年度卒業論文

奥野 寛央(おくの ひろひさ)

闘犬の観光化と衰退―闘う動物へのまなざしの功罪

論文(pdf 618KB)

 テーマ設定を含めるとおよそ1年がかりの作業で頭を悩ませたことも多くありましたが、非常に楽しんで取り組みました。「闘犬」というテーマは早くに決まっていたのですが、テーマ自体が珍しく、先行研究が少ないので、難航が予想され最初は不安が多くありました。しかし、現地の方々や山崎先生をはじめとする地理学教室の先生方、院生や学部生の皆様のご協力で卒業論文を無事に完成させることができました。現地に赴き多くの話を聞いたことや多くの文献を読み卒業論文の方針を考えたこと等の卒業論文執筆の過程は私にとって価値のある経験となりました。協力して頂いた皆様へ心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

私からの一言:地方の習俗を観光化させることが地方に外部のまなざしを持ち込み、習俗の存続が危ぶまれる事態をもたらすというパラドックスをテーマにした興味深い論考で、地方文化史としての価値もある論文となりました。このように問題設定ははっきりしていたのですが、素材をどう表現するかについていろいろ苦労もありましたね。言葉による表現力が試された論文でもありました。

御前 真琴(おんまえ まこと)

富山市八尾町の観光まちづくりにおけるアートプロジェクトとアーテイストの役割

論文(pdf 1.1MB)

 卒業論文執筆にあたり、担当の山崎先生には、三年生の演習にはじまり、卒論提出まで、大変お世話になりました。何も決まっていない状態で担当をしていただき、調査地やテーマの決定から数多くの助言をいただきました。また、八尾町の「坂のまちアート in やつお」の実行委員会の皆様、そして出展アーティストの皆様には、急なお願いが多かったにも関わらず、快く受け入れていただきました。皆様のご協力なくては、卒業論文を書き上げることができませんでした。ひとりで何もわからない場所に滞在し、知らない人々の中に飛び込むという経験は初めてだったので、戸惑うことも困ることも多々ありましたが、今後の糧となる経験になったと思います。最後になりましたが、数多くの助言を下さった山崎先生、快く調査に協力してくださった八尾町の皆様、本当にありがとうございました。

私からの一言:とりあえず行ってみようという感じで調査を始めたわけですが、先行研究を踏まえた理論的枠組みに基づき、しっかりとした論述ができています。せっかくそうやって完成した成果ですので、あなたの経験談や論文を後輩が参照できればと思います。私はお手伝いしただけかもしれませんが、やはり卒論は一人で書けるものではありません。どんな仕事でも同じことが言えるかと思います。

2013年度卒業論文

岩神 幸平(いわがみ こうへい)

エルサレム旧市街における歴史的建造物の保全と住民生活支援

論文(pdf 1.6MB)

 当初、漠然と世界遺産というテーマで卒論を書こうと考えていた僕は、山崎先生からエルサレム旧市街という提案をいただいた時、本当に可能なのかどうか半ば半信半疑で卒論に取り組み始めました。英語文献の講読から現地滞在の計画、インフォーマントの段取り、そして実際の調査に至るまで、山崎先生をはじめ、エルサレムで協力してくださった皆様のおかげで、困難を乗り越える事が出来ました。執筆に関しては反省点が残る部分が多々あり、少し悔いの残るものとなってしまいましたが、海外を対象に現地調査を行い、卒業論文を書きあげたというこの経験は、僕の人生の大きな財産となりました。ありがとうございました。

私からの一言:むりやりこちらからエルサレムに行ってもらおうとしたのですが、立派に調査を敢行されました。内容的にはもっと掘り下げられるテーマではありましたが、テーマ設定の困難性のみならず言葉や治安上の不安の問題も乗り越えた点で大変評価できる論文です。「世界中どこでも卒論を書こうと思えば書ける」という意気込みが後輩に伝わればと思います。

2012年度卒業論文

吉川 絢(よしかわ あや)

創造地区形成への取り組み―沖縄クリエイターズビレッジ事業を事例として

論文(pdf 1.1MB)

 卒業論文執筆にあたり、山崎先生をはじめ調査地におけるインフォーマントの方々には本当に貴重な体験をさせていただきました。とくに現地での調査では、人と人とのつながりの中で生まれる力のようなものが感じられ、つい夢中になって長くお話を聞いてしまうこともありました。しかし調査地に行って聞き取りをさせていただく前、卒業論文を実際に書き始める前など、準備不十分で臨んだ作業や調査が多くありました。そうした不備により有効な調査や執筆ができず、ご協力いただいた各方面の方々にご迷惑をおかけすることとなってしまいました。今後は卒業論文に関する調査や取り組みでの反省を活かし、計画的な物事の進め方をしていきたいです。

私からの一言:コザという「基地の街」の再生について、ズーキンの「創造地区」という概念を用いて考察し、一週間という短い期間でしたが現地に入って丁寧に聞き取りをした成果です。私のフィールドでもあるので、色々サポートできたのですが、役に立ったかな。

2011年度卒業論文

西岡 美樹(にしおか みき) ☆平成23年度文学部優秀卒業論文

「共生」の真実 外国人集住地域における地域の変容―東京都新宿区・大久保地域を事例に

論文(pdf 1.0MB)

 私は卒論のテーマとして「外国人の集住」について扱えたらいいな、と漠然と考えていた所、山崎先生に大久保地域にフィールドワークに連れていっていただいたのがきっかけで対象地域はすんなりと決めることができました。しかし、その地域でどのようなテーマを扱うかを決めることに苦労し、それも先生に方向性を示していただきました。扱ったテーマが決してポジティブなものではなく、また土地勘のない地域での調査は心折れそうなときもありましたがインフォーマントの方の暖かさ、先生の指導、地理学コースの皆さんに支えられて執筆することができました。本当にありがとうございました。

私からの一言:地理学コースからは久しぶりの優秀論文賞受賞論文です。大久保は長年「多文化共生」の先進地として注目されてきましたが、近年は「韓流の聖地」といった形での場所の形成(商品化・メディア化)が進んでいます。その一方で旧来からの日本人商店の経営は圧迫され、排除されていきます。こうしたエスニック・タウン化を冷静に捉えた論考になりましたね。遠方のフィールド調査に取り組んだ秀作です。

本多 あずさ(ほんだ あずさ)

在日ベトナム人の移住から見た定住―神戸市長田区を事例として

論文(pdf 505KB)

 卒論に取りかかった時期は遅くなってしまいましたが、月1回の指導会のおかげでモチベーションを保つことができました。ベトナム人の方への聞き取り調査では、言葉の点で対象が狭まってしまい、また調査人数も十分でなかったのが悔やまれます。協力者探しでもインフォーマントの人脈に頼った部分が大きいので、自分で移動した人を探すくらいの行動をすれば、「移動」の側を主に持ってこれただろうと思います。一人で飛び込んでいく度胸を身につけることが今後の課題です。しかし、1人に対して2回の聞き取りを行ったことで、2回目には新しい話を引き出せたという経験をしました。聞き取り調査では相手方との関係性が大事だと感じた、印象に残るできごとでした。

私からの一言:公務員志望の卒論生は採用まで時間がかかり、卒論への取り組みが遅れがちです。そういうこともあって、フィールドやインフォーマントへの接触は割と早くからできていましたね。ただ、インフォーマントがそもそも定住者であり、別の地域との比較研究が十分できなかったという点で、本来の関心に沿って論文を書くことが難しかったのかと思います。しかし、論述は筋道立っており、考察も明確で、論文としての完成度は高かったです。東京の区役所で同様の問題にも取り組まれる機会があるかもしれませんね。

山本 達也(やまもと たつや)

町家店舗を活用したまちづくり―京都市中京区を事例として

論文(pdf 2.3MB)

 おおまかな構想としては、三回生のころから教員の方々にご指導いただけた事もあって、四回生になった時には、ほぼ固まっていました。しかし、構想が固まってからの動き出しが非常に遅く、結局完成したのは提出直前となってしまいました。また、山崎先生からの熱い指導のおかげで、奮起した部分もあったように思います。
 内容に関しては、当初に予想していた結論とは違うものになりましたが、京都の町家店舗の実態に、より即したものになったと感じています。
 今回の卒業論文を執筆するにあたって、お世話になった教授方、インフォーマントの方々には大変ご迷惑もかけたと思っています。ありがとうございました。

私からの一言:指導教員の仕事は尻たたきです。放っておくとぎりぎりまで動こうとしない学生さんのペースメーカーなのです。しかしテーマは現代京都の中心市街地における町屋利用をめぐる重要な課題であり、問題点を的確に把握できた論文に仕上がっています。よって、査読教員の評価も良かったです。今後は京都でのご活躍をお祈りしています。

2010年度卒業論文

中山 和哉(なかやま かずや)

伊丹空港に対する周辺団体の態度

論文(pdf 2.1MB)

 私は就職活動が4月中に終わったので、余裕を持って11月から12月の間に完成させようと考えておりました。しかし私としては4月以降少しずつ取り組んでいたつもりだったのですが、なかなか具体的な構想が定まらず結局完成は提出期限間際となってしまいました。一番の原因は、最終的に書くべきことは先生が決めてくれるだろうと甘い考えを持っていたことです。しかし卒業論文はこれまでの大学での授業と全く異なり、自分で考えて進めていかなければならないものでした。ただ私の場合、構想はどうであれテーマは絶対に“空港”と決め込んでいたので、余計なことを考えずに取り組めた点は良かったです。そのような中で山崎先生には上手く方向性を暗示して頂いたと思います。またインフォーマントの方々にも大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

私からの一言:伊丹空港問題には周辺地域の様々なアクターが関わっており、それらを全てカバーすることは困難であったかと思いますが、良くまとめられた論文です。なお、卒論指導とは最終的に書くべきことを教員が決めることではございません。関空でのご活躍お祈りします。

山田 恭平(やまだ きょうへい)

場所の記憶に関する住民意識―沖縄県沖縄市(旧コザ市)の元Aサイン店を事例にして

論文(pdf 354KB)

私からの一言:復帰前の「Aサイン」をめぐるコザの人々の思いを明らかにしようとした論文です。就活がなかなか終わらなかったことが影響しましたが、時間があればきっと面白い論文になったと思います。いつか感想もお届けいただきたいです。

2009年度修士論文・卒業論文

修士論文

林 修平(はやし しゅうへい)

米軍統治下の沖縄における基地跡地利用―コザ解放地を事例に

論文(pdf 7.0MB)

 このたび、山崎先生をはじめ多くの方々のご指導・ご協力をいただき、なんとか修士論文の提出までこぎ着けることができました。ご承知のように、大学院修士課程は通常2年で修了となるわけですが、私は修了までに4年の歳月を費やしました。なにか大がかりな調査を実施したために年限を延長した…といった理由があれば話は別なのですが、私の場合、論文のテーマと自身の将来を見極められないまま、いたずらに時間を消費してしまった結果であり、大変お恥ずかしい限りです。
 卒論や修論の執筆にあたっての最重要課題は何かと考えてみると、これは言うまでもなくテーマの決定でしょう。テーマが決まれば、半分書けたといっても過言ではないかもしれません。ですから、テーマが決まらないのであれば、早急に指導教員に相談することが肝要です。私は修士論文で、本土復帰以前の沖縄における米軍基地の跡地利用について取り上げましたが、このテーマは山崎先生からお薦めいただいたものです。修士論文に取り組んで改めて気づかされたのは、こういった非常に基本的なことでした。もちろん、私のようにだらしない結果(修論を提出できたとは言え…)になってしまう学生さんは、まずいないでしょう。ここで書いたようなことも、基本的すぎて参考にならないかもしれませんが、このような失敗事例の教訓(?)も活かして、よりよい卒論・修論を執筆していただければと思います。
 末筆ではありますが、改めて山崎先生に御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

私からの一言:悩みを抱えて長年論文に取り組めずにいる人はいます。それでも書き切ったということは誇ってよいと思います。一人で悩み続けるよりも誰かに相談することも大事ですね。指導教員はそれが仕事でもあります。まだまだこれからの人生です。これを糧にさらなる飛躍をお祈りします。

 

卒業論文

上甲 満洋(じょうこう みちひろ)

沖縄県那覇市の中心市街地における通りの変容―沖映・浮島・桜坂・桜坂中通りを事例として

論文(pdf 1.9MB)

 一つの論文を書き上げることがこれほど大変だということが今になってようやくわかった気がします。特に論文のテーマ設定には苦労しました。それでも自分の身近な地域ではなく、これまでに自分が行ったこともない場所を調査地に選んだことは調査を楽しく行うことができる一つのプラスの要素となったと思います。
 反省点としてはこの論文に現地での調査をうまく反映させることができなかった点です。しかし、この経験をこれからにうまく生かしていきたいと思います。
 今回、現地調査にご協力くださったインフォーマントの方々、そして山崎先生には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

私からの一言:大阪から離れたフィールドで調査するのは簡単でなかったと思いますが、敢えて見知らぬ土地を選んだ点は評価できます。那覇市は十分な工業化の進展なしに人口が過剰に集中するなかで、都市再開発が急速に進んでいます。どういう枠組みで変容していく通りを見るのかと、その枠組みからどの通りを中心に調査するかを、もう少し絞り込んでも良かったでしょうね。

2008年度卒業論文

辻野 菜穂(つじの なほ)

沖縄県沖縄市旧コザ地区における「基地の街の記憶」と地域解釈

論文(pdf)

 実習で行った沖縄市が好きになったから、という単純な理由で調査地をコザにした為に最後の最後までテーマが煮えきらず、調査・執筆ともに苦労しました。最終的には聞き取り内容からテーマを絞っていったような形になってしまいましたが、結果として自分が最も興味があった事を卒論に出来たのではないかと感じています。
 聞き取り調査に関しては、統治の記憶がはっきりと残る街で当時の話を聞くというのは大変デリケートで、時にはまったくインタビューに応じて貰えない日もあり、へこたれそうになった事もありますが、インフォーマントの方々やコザの人々の暖かさ、そして先生の励ましやご指導に支えられ、なんとか終える事ができました。
 インフォーマントの方々、コザで出会った沢山の方々、そして実習を入れると2年に渡ってたくさんのご指導を頂いた山崎先生、大変お世話になりました。ありがとうございました。

私からの一言:基地のある場所と記憶というテーマはなかなか論文として扱いにくいテーマだったと思います。しかし何度も沖縄に足を運んでインフォーマントの話を粘り強く聞き取った内容から、その一端を明らかにできたのではと思います。

2007年度卒業論文

北岡 弘康(きたおか ひろやす)

市町村名の定着―湯布院・上越・美方という3地域の事例を通して

論文(pdf)

 今になって漸く卒論が終わったという実感が湧いてくるようになりました。
 もともとこの論文は、もともと興味のあった市町村名で何かできないかというところから始まりました。しかし、いざ卒論構成段階になるとなかなか難しく、「興味がある」ということが逆に客観的に市町村名について考察する妨げにもなりました。また私の場合公務員試験で夏が終わるまでなかなか身動きが取れず苦しい思いをしました。そんな中で、山崎先生から様々なアドバイスを頂きとても心強く思いました。そして、実際フィールドワークの段階では、不慣れな私に多くの人々が親切に応対して頂きました。実に沢山の人々に支えられての論文だったと思います。
 論文自体は、まだまだ不十分なものです。しかし、これからは「一つ論文を書いた。」ということを人生経験のひとつとして己の中に取り込んでいきたいです。

私からの一言:地名の問題は哲学的な内容を含むだけに、考察の対象とすべき要素を切り分けて論ずることが難しいのですが、短い時間ながら三つの地域で調査することによって主張に説得力がでました。

田立 あゆみ(ただち あゆみ)

聖地の観光化―沖縄県久高島を事例に

論文(pdf)

 卒論を執筆するにあたり、テーマを設定するのが本当に難しかったです。
「どうせ調査するなら遠くが良い」という非常に曖昧な考えから調査地域を絞り、そこで自分の関心のあることを探りました。結果的には、非常に興味を持って調査に取り組めたので良かったですが、テーマの決定は早いに越したことはないと痛感しました。
 実際に卒論を執筆するに当たっては、聞き取り結果から自分の主張したい結論に繋がる内容のみを抽出していく作業に苦労しました。また、インフォーマントの方々の主観を、客観的に見るということも、非常にエネルギーのいるものでした。
 卒論執筆を振り返ると、自分の力不足に何度も悩まされましたが、部活と両立して何とか書き上げることができたことは、少しは自信に繋がりました。
 最後に、現地でお話を聞かせていただいたインフォーマントの皆様、テーマ設定時から提出間際まで熱心に指導して下さった山崎先生に、心からお礼を申し上げたいです。ありがとうございました。

私からの一言:久高島に二度も出かけた力作です。担い手を失いつつある宗教儀礼を観光化へとどう結びつけるか、あるいは結びつけないかをめぐる「聖地」の葛藤が聞き取りから浮かび上がっています。

西村 翠(にしむら みどり)

「沖縄移住ブーム」の成り立ちと現状―石垣島を事例として

論文(pdf)

 卒論のテーマを漠然と「沖縄移住」にしようと決めたものの、具体的に論点を絞ることがなかなかできませんでした。ひとつの事象をテーマとしてとりあげるといっても、視点を変えればさまざまな見方ができるということを知りました。
 石垣島での現地調査では準備不足で十分に調査しきれなかった点が反省点ですが、聞き取り調査を通じて資料や書籍からだけでは見えてこなかった実際の移住者の生の声を聞くことができたのは論文執筆に当たってとても参考になりました。移住者一人ひとりの話を通じてその人の考え方や生き方まで垣間見ることができたのも大変興味深かったです。
 快くインタビューに応じてくださった方々、ご指導してくださった山崎先生、本当にありがとうございました。

私からの一言:調査に向けての問題設定はスムーズに行ったのですが、遠方である分インフォーマントの属性に応じた聞き取りの戦略の立て方が難しかったですね。しかし、先行文献をもとに、沖縄本島から先島への観光ブームの推移を移住の指向と結びつけるなど、説得力のある論述が展開できましたね。

2006年度卒業論文

豊島 早苗(とよしま さなえ)

震災モニュメントと記憶

論文(pdf)

 卒論の作成にあたり、まずテーマを考えるのが大変でした。何が地理学なのかを考えていると、何を調べたらいいのかわからなくなってしまいました。今、振り返ると、難しく考えずに、自分が興味のあることを調べるのが良かったんだろうなあと思います。
 聞き取り調査は本当に大変でした。それでも、たくさんの方々にいろいろな話が聞けて、本当に良かったです。貴重な体験ができました。20,000字と聞いた時には書けないと思いましたが、書いてみると書けたことに驚きでした。まして、文字数を減らすことに苦労することになろうとは、思いも寄りませんでした。
 お話を聞かせてくださった方々、ご指導くださった山崎先生、本当にありがとうございました。

私からの一言:地理学として取り付きやすそうで、取り付きにくいテーマに果敢に取り組んだ力作です。とことんまで聞き取っていくという姿勢で臨んだ分、迫力のある論文になりましたね。

2004年度卒業論文

川崎 那恵(かわさき ともえ)

「地域」と記憶―新潟水俣病をめぐる運動の可能性

論文

 全学共通教育で公害問題を学んだことをきっかけに、2003年3月新潟水俣病の現地を訪れる機会がありました。そこで出会った人々と継続的に交流させて頂く中で、新潟水俣病のことをテーマになにか書いてみたいと思うようになりました。
 論文をまとめるにあたって、常に頭の中にあった問題意識は、新潟水俣病を伝えるためにはどうしたらよいのかということ、安田町の運動スタイルをその他の社会運動にも応用できるのではないだろうか、応用できるとしたらそれはどのような点なのかということです。後者の点については、今後、運動に参加する人々へのインタビューを行うなどして、より多角的に安田町の運動をとらえることで、さらに深く掘り下げてみたいです。
 本格的な論文というものを初めて書きましたが、論文は論理的に説得的にきちんと証拠を示して書かなければならないという点で、それまで書いてきたレポートとは全く違い、とても苦労しました。しかしながら、なんとか卒論というかたちで残せたことでこのようにHP上に掲載して頂き、一人でも多くの人たちに新潟水俣病のことを伝える機会を得られたことを大変嬉しく思っています。
 現地新潟でお世話になった皆さん、ご指導してくださった山崎先生、本当にありがとうございました。

私からの一言:(ポスト)社会運動における「地域」の意味という難しいテーマで、新潟から北海道まで関係者を追っかけていったエネルギーは賞賛もの。地理らしくないといわれるかもしれませんが、そんなことはこの論文にとって重要なことではありませんね。

佐藤 聡(さとう あきら)

新聞記事における新世界について

論文

 正直なところ、この卒論を完成できるとは思ってもいませんでした。というのも、作成の作業に本格的に取り掛かったのが11月くらいだったからです。また、集めた資料を整理し、実際に文章を書き始めたのは提出日の10日ほど前ということで、書き上げることができたが不思議なくらいです。このような短期間で作成したため、内容はかなり薄いものとなってしまいました。もっと早くに取り掛かっていればと強く感じているところです。なにはともあれ、無事に提出することができて本当によかったと思います。

私からの一言:ご反省の弁の通り、もっと分析できて面白い結果を出せたはず。卒論執筆での経験をお仕事にも活かしていただければと思います。

日野 智予(ひの ちよ)

幼い子を抱えた新規移民によるエスニックネットワークと近隣ネットワークの利用―カナダ・トロント、South Parkdale地区の事例

論文

 卒論執筆前年度にボランティアとして関わっていた子育て支援施設の利用者や運営者との交流する中で、移住間もない移民が新しい土地で幼い子を育てる際、元来子育てが抱える問題に加え、言葉の壁や文化の違いから新たな問題を抱えたり、問題解決自体が難しくなる可能性があるのではないかと考えました。そこで、彼らの居住地域においてどのようなサポートやサービスが提供されているのか、またそれらのサービスやサポートに彼らがアクセスする場合、近隣ネットワークとエスニックネットワークのどちらを利用しているのかを明らかにしようと試みました。
 執筆に当たっては、気付いたことや考えたことを逐一書き溜めておいたものの、それらをどのようにつなげていくかということがなかなか定まらず、提出直前まで放置していたために、満足のいくできとはほど遠いものになってしまいました。しかし、ボランティアとして関わっていた時に漠然と感じていたことや聞いたことを資料を通して裏付けることが出来たり、調査を通して、移民の方々それぞれの生き様や価値観を伺うことができたことは、とても興味深く、自分としては得るものが多い研究でした。
 山崎先生は現在子育て、奥様にとっては異文化の中での子育て真っ最中でいらっしゃるので、ご自身の経験も交えてご指導・ご助言を頂けたことが本当に幸運だったと思います。

私からの一言:海外滞在の経験を活かして、短い期間で集中的な海外調査をやるバイタリティは後輩にも見習ってもらいたいですね。テーマの持つ社会性にも配慮できた論文です。